誘惑欲張りJEWELRY 『1』 (ページ18)

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目の前の仕事ページ18

「このサビの部分、もっとROCKに出来ねえのか。」

　先輩方を観察して作った曲を、Aちゃんのメイクアップ講座が終わった後、約束通り、多少強引ながら曲の打ち合わせをして貰った。

　皆さんあまり乗り気では無さそうだが、仕方無さそうに様々な意見を聞かせてくれた。

　美風先輩の的確なアドバイス、カミュ先輩のちょっとブッ飛んだ意見に、黒崎先輩のRockな曲にしたいと言う願いを寿先輩が上手く纏めながら私に伝えてくれる。

「大体、皆さんがどういう曲にしたいかは分かりました。此れを元にして、また明日までに作ってきますね。」

　彼等の意見を纏めたデータが入っている、ノートパソコンをパタンと閉じ、鞄の中へとしまいこむ。

「Aちゃんの鞄は四次元ポケットか何かかな？」

「そんな様なものです。」

　寿先輩の冗談交じりの苦笑を、さらりと適当に流し、バイトへ急ぐ。

　まだ皆さんの態度はぎこちないが、新曲の話ができただけでも良しとしよう。

「失礼しまーす。」

　今日はキタコレの撮影の同行だったが、大分遅くなってしまった。

　そろりそろりと、スタジオの扉を開けて静かに入る。

　澄空さんは「MooNs」の方に付いて行っているらしく、残念ながら不在。

　緊張感漂う現場にて、私は邪魔にならないよう隅の方で作曲中だ。勿論、彼等の撮影が終わる前、お茶やタオルは用意済みである。そして是国さんのチョッパチャロスも買ってあるから、無くなっても直ぐに出せる。後はひたすら待つだけ。

そして私が作曲し始めて、約2時間が経過したとき。

「あれ？！」

　ノートパソコンに繋げて音を確認していた筈のイヤホンが、突然私の耳から外れた。

「ちょっとー、何時まで仕事やってる気？こっちはもう終わったんだけど。」

　プクッと頬を膨らせ、腰に右手を当て、空いた左手に私がさっきまで耳につけていた水色のイヤホンを持っていた。

　これは相当御立腹である。

「こらこら、竜持。Aの仕事の邪魔しちゃいけないよ。」

　すかさず紳士的な北門さんがフォローを入れてくれるも、この事に関してはどう考えても私が悪い。

　他の仕事に夢中で、今目の前にあるやらなければいけない事を放ったらかしにしてしまったのだから。

「済みません、是国さん、北門さん、以後気を付けます。」

　二人に深々と頭を下げ、急いで開けたままのノートパソコンを閉じた。そして直ぐ様彼等にお茶を渡し、次の予定を伝える。

　アイドルは、中々忙しい。