変にならずには居られない ページ49
「いひゃい。」
「何やってるの、A。」
チョッパチャロスをくわえ、こちらに冷たい視線を向ける是国さん。でも、今の私は何も思わない。
只々、これが夢でないことを確認する為に己の頬を強く捻っている。
是国さんだけでなく他の人達の視線も痛いがそれどころではないのだ。
「いひゃいひょいゆひょひょひゃひょれはゆれやひゃいひょか。」
「何て?」
両頬をつねったまま話たせいか、私の言ったことは伝わらず野目さんに聞き返されてしまった。
「痛いと言うことは、これは夢じゃないということか、とはどういう意味だ?」
「今のでよく分かりましたねモモタス?!」
「差し入れ持ってきたぞ、ってどうかしたのか?」
何故か伝わった音済さんに、理由を話そうと口を開き、声を喉から出そうとした時、タイミング悪く修二伯父さんがレッスンルームに入ってきた。しかも、差し入れと一緒にプロセラの新曲が入ったシングルCDを片手にだ。
「社長、何故プロセラのCDを?」
殿さんが、今此処に居る皆の心を代弁するかのように伯父さんの手中に収まるCDに突っ込んだ。
「嗚呼、これか?中々良い曲だったからな。お前らの良い刺激になるだろうと思って買ってみたんだよ。ま、ライバル事務所の売上げに貢献しちまったのは癪だがな。」
ああ、なるほど、と一同が納得する中で、私は伯父さんのと或る言葉が引っ掛かり、小さく身震いをした。
「お、伯父さん今なんて?」
そして伯父さんの前までツカツカと歩み寄り、彼の広い肩を掴み軽く揺らす。
「はぁ?だから、ライバル事務所の―――」
「その前!」
「どうしたんだよ急に。だから、コイツらの良い刺激になるだろうと―――」
「そのもっと前!」
「あ?中々良い曲だったって言ったんだよ。つか、お前はいつまで俺の肩を揺らしてんだよ。」
「嗚呼、ごめんッて違う!! 聞いて伯父さん!」
「さっきから充分聞いてるだろ。お前、今日は何時も以上に変だぞ?」
何時も以上、と言う言葉は聞き捨てならないが今はそんな事に一々反応していられない。だって、私の作った曲が周囲に認められつつあるからである。
自分が作った曲が、音楽のランキングで1位を取り、認められる、これが変にならずに居られるかと言う話だ。
「その曲ね、私が作った曲なの!!」
「「はあ?!」」
その場に居る全員の驚愕の声が、広いレッスンルームに木霊した。
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作者名:櫻餅 | 作成日時:2017年5月29日 10時