月恋 第36話 「何気無い質問」 ページ37
「A、今日はアイドル雑誌の撮影と取材。それとコヨミラジオの収録だ。最近、少しずつだが仕事が入るようになって良かったな。頑張れよ!」
車の中に、黒月さんの低くて格好良い声が響き渡った。
「はい、頑張ります」
黒月さんの緊張を解してくれる様な、勢いのある声と言葉を耳にし私は後部座席で笑顔を見せた。
ツキウタ。宣伝アイドルとしてデビューし、また数日経って漸くラジオ以外で入ったお仕事は今、中高生に人気のアイドル雑誌の撮影と取材。
やっと巡ってきたアイドルとしての仕事だ。気を抜かずに頑張ろうと意気込む私の右隣に座るのは、我らがプロセラの兄貴分、文月さんである。
文月さんは今日から約2週間、アメリカにある自然が作り出した流れる岩、アンテロープ・キャニオンまでロケに行く。そのため、彼を空港まで送り届けてから私の撮影現場まで向かうことになっているのだ。
「Aはアイドル雑誌の撮影か、頑張れよ! 俺はアンテロープ・キャニオンから無事に生きて帰ることを頑張る!」
そう言って、文月さんは私の頭を軽く撫でて満面の笑みを浮かべた。
頑張ることが切実過ぎて、笑えませんよ文月さん。
心の中でツッコミ、私は思わず苦笑いを溢す。
それから空港に着くまでの間、黒月さんと文月さん、私の3人で他愛の無い話をした。その時だ。
「A、お前はどんなアイドルになりたい?」
「え?」
文月さんがふと、私に優しそうな目付きをして私に問い掛けた。
きっと、今までの会話からしてふと気になったことを素直に口にしただけなのだろう。文月さんは思ったことやふと疑問に思ったことを素直に口にする人だ。
だから、今の質問も何気無くしただけなのだろう。けれど、私はそんな何気無ない質問にすぐ答えることが出来なかった。
「えっと、それは―――」
「おーい海、着いたぞー」
必死に答えを見つけて彼の質問に答えようとした時、黒月さんの声にかき消されてしまった。
「突然、こんなこと聞いて悪かったな。この世界、強い信念や目標が無いと生き残るのに苦労するから少し気になっただけだ。」
突然の質問に戸惑う私を見て、文月さんは優しい笑顔を浮かべ、再び私の頭を軽く撫でて車を出ていった。
「じゃ、また2週間後にな。腹出して寝るなよー」
「ね、寝ませんよ! 文月さん、いってらっしゃい。お気をつけて」
車の中で、ずっと文月さんにされた質問が私の頭の中を駆け巡っていた。
月恋 第37話 「眼鏡=本体」→←月恋 第35話 「虚無感に襲われる」
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櫻餅(プロフ) - snowさん» コメント有り難う御座います。少しでも共感して頂けて、大変嬉しく思います。これからツキウタ。メンバーと関わり、夢主がどんどん成長出来るお話にしていきたいと思っておりますので最後までこのお話にお付き合い願えたら嬉しいです。応援有り難う御座います！ (2017年12月21日 19時) (
レス) id: 5dfdc31c69 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - こんにちわ♪最新話読みました。ちょっと、自分のことみたいにホロリとしました。ヒロインちゃんが無事に乗り越えてくれると信じてます。目標が早く見つかること、祈ってます。頑張って下さい！ (2017年12月20日 14時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 櫻餅さん» 待ってます。急激に寒くなりましたので、風邪など引かないように気を付けてください。 (2017年10月7日 1時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
櫻餅(プロフ) - snowさん» ありがとうございます！そう言って頂けて嬉しいです！不定期更新ですが、頑張ります。 (2017年10月7日 0時) (レス) id: aab212b765 (このIDを非表示/違反報告)
snow(プロフ) - 初めまして♪楽しく拝見させて頂きました。愛ちゃんへの愛が溢れていて、素敵でした。更新、楽しみにしてます。これからも頑張って下さい!! (2017年10月6日 9時) (携帯から) (レス) id: bc61ae6263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：櫻餅 | 作成日時：2017年9月19日 0時
