仮面夫婦

仮面１３ ページ18

「あー、暇。」

　首領とエリス嬢、そして中原さんとの肩が凝る買い物をした翌日の事である。

　中原さんは仕事に行き、私は何時も通り、家で1人寂しく彼の帰りを待ち乍ら、暇を持て余していた。

　今日は残念な事に、一番気楽に相手をしてくれる話し相手、梶井さんは中原さんの任務に同行して不在。きっと何処かの楼閣(ビル)を、彼の世にも奇妙な梶井さんお手製、檸檬型爆弾で吹っ飛ばしに行ったのだろう。

そして姐さんも首領と、何処の組織と同盟を組むかという大切な会議で席を外しており、黒蜥蜴も樋口さんも虎に変化出来る異能力者を捕獲しに出掛けてしまった。

　マフィアがこうも昼間から活発に動いているだなんて、物騒な世の中になったものである。

――――――其の横浜で一番物騒で厄介な、マフィアの幹部に嫁いだ人間が一体全体何を云っているのであろうか。

　1人、愉快なボケツッコミを繰り広げ、余りのくだらなさに深い溜め息を吐いた。そして家にポツンと居ては詰まらないだけだと悟り、私は横浜の街へ重たい足取りで出掛けていったのである。






　先ずは何処へ行こうか。

　特に予定もないままほっつき歩き、とうとう鶴見川の河川敷き迄やって来た時―――私は有り得ない光景を目にしたのである。

「人が川に流されている?」

　そう、川の水面からにょっきりと細長い何とも綺麗な脚が飛び出し、クルクル回転し乍ら流されていく世にも不思議で珍しい、中々御目にかかれない珍妙な光景だった。

　自然と風景と同化していたからか、全然気付かなかった。

　人が私の目の前を通り過ぎ、亦どんどん流されていく。私は其れを呆然と眺めて数秒で我に返る。

此れは、助けなければいけないのでは?

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