百四 ページ4
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「りゅう？」
驚いた表情で言うのも当たり前だ。いつもと違うのは髪の毛のせいだけではない、顔に傷を描き手拭いで片方の顔を隠す。ここまで来ると役者も真っ青のレベルで店に顔を出したのだから。
最後日、客を取り挨拶をしているのを前もって知っているから出来る行動。
「細田ってりゅうの名前？」
「偽名ですって。アカンかなって思うたんやけど忠義さんが受け入れてくれたから助かりました。」
「初めの頃の客とか嘘ついた。」
「それだったら分からへんか今の人たち。」
「覚えてへんからなんとでも言える。」
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腕を組んでそう言うと隆平は息を吐き出してから言う。
「しかし……周りの警備が凄いですね。」
「気が変わらないように。って、見張っているん。」
「凄いんやね。」
「店のメンツがあるから。」
小声で話すのも襖の向こうでは金剛が待機しているせいもある。胸元に隠していた面を取り出し準備を始めると忠義は不安な表情になって行く。
「無事に逃げれる？こんな状況で無理ちゃう？」
「僕に任せて。」
「りゅうに迷惑が掛からへん？」
「大丈夫やで……ただ……走らなあかん。」
「……体力もつかな。」
「それな。」
思わず顔を見合わせ笑ってしまうと走りやすい様に髪の毛を束ね着ているものが脱ぎ落ちないようにしっかり身なりを整えてから自分の右手と相手の左手を紐で結ぶ。
「引きずってでも逃げますから。」
「ありがとう。」
「逃げて自由を楽しみましょう、忠義さん。」
「りゅう……」
額を合わせ数秒。
息を吐き出し「行きますよ。」隠し持っている短刀に手をかけてゆっくりと視線を相手に向ける。
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「うん。」
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――――逃げるのは難しい。そない簡単に行くわけないのも分かってんねん。
でも、逃げなきゃ
このままだと離れてしまう
なら……僕のできる事は……
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作者名：瀬奈 | 作成日時：2021年11月5日 16時
