イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ4)

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164.夢の中まで。ページ4

『お疲れ様』

金曜の夜にも届いた先生からのLINE。
だけどその日は、いつもと少し違ってた。

『明日、仕事何時まで？』

そんな事、初めて訊かれた。
でもきっと、私はこうやって先生から訊かれるのを待ってた。

だから、ビックリして嬉しくて。
でも単に訊いて来ただけかもしれないから、「フゥ...」と息を吐き出し落ち着いて返信する。

『明日はお昼からなんで、21時です』

先生が、私の期待してる返事をくれるのかどうか。
祈るようにスマホの画面を見詰める。

「...やった...！」

届いたメッセージに、声が漏れた。

『迎えに行くよ』

やった...！やった...！！
明日は先生に会える！

ずっと、会いたかった。
でも先生は学校あるから忙しいだろうし、私だって仕事してるし。

世の中のカップルはどうやって会ってるの？
「会いたい」って彼氏におねだりするのかな...無理無理、できないよ。
先生が誘ってくれなきゃ、会えないんだろうな...。

そんな風に思って、ずうっと待ってた。

『先生』

返信する指が、ちょっと震えた。

『何？』
『嬉しいです』

「嬉しいです」文字と一緒に声に出してしまう。

『そりゃ良かった(笑)』

その返事に、またニヤけてしまう。
先生の「クフッ」って笑い声まで聴こえて来たような感じ。

『また明日の21時頃に連絡するわ』
『はい！』
『じゃ、明日に備えてもう寝なさい』
『先生は？』
『オレは明日休みだからね。連休だからね。夜更かし三昧』

休みだって事を自慢するようなメッセージの後に、こないだも見た木目のテーブルに乗ってる小説の写真。
数冊並べてある。

『今晩は、この中のどれかを読もうと思ってんの』
『私、右端の本読みましたよ！結末、教えてあげましょうか？』
『ばか！早く寝ろ！笑』

ベッドにゴロゴロ転がりながら、ウフウフ笑ってしまう。

『ねぇ、先生』
『何よ、ネタバレすんなよ？』
『しませんよ！もう寝ます。だから、先生』

ドキドキしながら、文章を作って行く。

『夢に出て来てくれますか？』

明日は休みで今から大好きな読書ができてゴキゲン良さそうな先生に、私は冗談に隠して想いを伝える。

先生、笑ってくれてる？
「馬鹿だな」って、呆れたように眉を下げてくれてる？

『それは出演料、貰わないとなー(笑)』

届いたのは、まるでスナックのママさんみたいな返しと

『じゃあ夢の中まで会いに行ってやるから、ちゃんと探し出せよ？』

キザで蕩けそうな、甘い言葉だった。