イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ9)

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9.お手伝い。ページ9

二宮先生の手首は、普通の人よりも間接柔らかいのかな？って位にゆらりゆらりと柔らかく揺れる。

その揺れにウットリしながら一歩踏み出せば、「自分の鞄も持って来いよ？そのまま帰るでしょ？」って言われて慌てて鞄を手にした。

「ごめんな、じゃあコレ運んでくれる？」

教壇に立つ先生の前に立つと、高く積まれてたノートを二つに分けて少ない方を指差す。

「こっちで良いですよ？」

私が多い方を持とうとすると

「オンナノコに重い方持たせるオトコがどこに居んの」

なんて、クラスの男子からは絶対に出て来ないような台詞が出て来てクラっとした。

でも先生は何も気にしてない様子で今日使ってた辞書や教科書、出席簿や資料の本の上に数冊のノートも重ねて「んしょ」って小さく掛け声を出して持ち上げた。

板書をする時に邪魔らしくて、先生はシャツの袖を少しだけ腕捲りしてる。
そこから見えてる手首に、キュっと筋が入った。

そんな些細な事にまで、ドキドキして

イイモン見た！って

今日は良い日だ！って思えるんだ。

先生のちょっとだけ後ろを、ノートを抱えて歩く。

すれ違う他のクラスの女子生徒が「ニノちゃん、バイバーイ！」って手を振る。
「二宮先生！明日、うちのクラス授業あるからね！」って嬉しそうに話しかける。

先生と一緒に居る私はそんな彼女たちに、ちょっとだけ優越感。

神様、本当にありがとう。
私、幸せです。

色んな想いを必死で隠しながら、先生に続いて国語科準備室に入る。

「ここ、置いてくれる？」
「はい」

顎でクイっと示された机の上にノートの山を置くと、先生もその上に持ってたノートを重ねた。

「助かったわ」
「いえ！全然...こんなの大丈夫です」

いつでもお手伝いします！......って言えば良かった。失敗。

「見た目以上に重いんだよな、紙が束になったモンって」
「あー。本とか重ねると、すっごい重いですよね！」
「オレ昔引っ越す時さ、段ボールに文庫本をビッチリ詰めて蓋したら持ち上げた瞬間底が抜けた事あったわ」
「えー！？」
「まぁ、あれ底抜けなくっても持ち上げられなかっただろうけどね。重くて」

クフって笑った先生が可愛くて、ちょっと同い年くらいに見えてビックリする。

「じゃ、頑張ってくれた結城にオレからご褒美でもやろうかな」
「え？」
「ご褒美」

良い気分でもう帰ろうとしてた私は、先生の言葉に思わず「ご褒美...」とオウム返ししてしまった。