イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ5)

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5.運命の神様。ページ5

私は、いつから先生を好きになってたんだろう。
恋してたんだろう。

裏庭の前で初めて喋った時からかもしれない。

でも、もしかしたら入学式で目が合った時にはもうそうだったのかもしれない。

だけどもう、そんなの結構どうでも良くって

私は毎日、先生を想った。

会える日もあれば、会えない日もある。

会えた日には、何か話したいから現国のコトを質問するようにしてる。
質問したいから、必死で教科書を読むようになった。

結果、ちょっと現国の成績が良くなった。

先生はいつだって「小日向先生に訊けやー」って面倒臭そうに言うけど、時間が許す限り立ち話でも丁寧に質問の答えを教えてくれる。

あ、ちょっと違うな。
答えは教えてくれない。
答えを導く考え方と読み方を、解説してくれる。

体育祭ではポロシャツとスウェットパンツで何だかの日曜のお父さんみたいになってる先生が

骨折して体育祭に出れなくなっちゃった男子生徒の代わりに、リレーでA組チームのアンカーになった。

いくら若いって言っても高校生に比べたら相当大人なのに、先生は俊足だった。
さすがにブッチギリって訳じゃ無かったけど、一位になったって訳でも無かったけど

綺麗なフォームと、靡く黒髪、その表情が格好良すぎて倒れそうになった。

文化祭では、A組の生徒達と楽しそうに合唱をしてた。
先生がギターを弾いて。

先生のクラスの子達が羨ましくて、羨ましくて、ちょっと泣いたのは誰にも内緒。

こんなに好きなんだから、きっと来年は担任になって貰える。

担任がダメでも、授業は受け持って貰える。

何の根拠も無いのに、そう信じて疑わなかった。

だけど、運命の神様ってのが居るなら何て意地悪なんだろう。

二年になっても私は、二宮先生のクラスにはなれなくって

それだけじゃなくって、授業も持って貰えなかった。

しかも先生のクラスは隣。
ホームルームの時に、生徒達の楽しそうな笑い声が隣から聴こえて来る度に苦しかった。

「お、結城。おはよ」

だけど隣だから、ホームルームが終わってすぐに教室を出れば高い確率で二宮先生に会える。

「おはようございます！何か楽しそうでしたね。笑い声、聞こえてました」
「え？あぁ、昨日観たドラマの矛盾点とか話したからかな」
「えー...面白そう...」
「また今度、時間あったら結城にも話してやるよ」

そんな時間無いもん...って分かってるけど、先生にポンと頭を撫でられるともうそれだけで充分になるんだ。