智あり雅やかな君に、潤い和み我も翔ぶ。【ars短編集】 (ページ8)

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「お前、ズルいぞ！」って言いながらコントローラーを床に置いてカズがキッチンに走って行った隙に、無抵抗の彼のキャラをボッコボコ。

カズが戻って来た時には、私のキャラクターの方に『WIN』の文字が出ていた。

「さすがに今のはノーカウントじゃね？」
「これくらいのハンデが無いと、カズのプライドが許さないでしょ？」

ゲームに関しては負けず嫌いのカズは悔しそうだけど、「分かったよ！」とゲームの電源を切った。
色んな意味で私の勝ちだ。

部屋着の上にダウンを着て、夜中の町へ出る。

冷たい風が吹いてカズの髪がバサっと靡いて、私の髪も顔にまとわりついた。

「寒いぃぃぃ！」

そう言いながら、カズの背中に隠れるようにして歩く。

「人を風除けにすんな！」
「だって寒いんだもん」

カズが突然走り出して、風除けが無くなった私は必死で追いかける。

「待ってよー！寒いでしょ！」
「走ったらあったかくなったでしょうよ」
「しんどくなった」

ゼェゼェ言いながらカズを睨むと

「Aがコンビニ行きたいって言ったんでしょ？」

と、デコピンされた。

深夜のコンビニは独特だ。
その雰囲気が好きで、個人的にカズはこの雰囲気によく似合うと思ってる。

ほら、猫背でポテチの棚見てるのが絵になる。
そう言われて嬉しいかどうかは別として。

コーヒーのお供にクッキーとシュークリームを買うと「太りますよ」と言われたから「丸くなっても可愛いでしょ？」と言うと「それは無いわ。絶対無いわ」とバッサリ切り捨てられた。

「寒いー」
「寒い寒いうるさいな。言ったら寒くなくなんの？」

面倒臭そうに言いながら、手を繋いでくれる。

カズは、そーゆー人。

「ねぇ、カズ。楽しいね」
「まぁね」

ちょっと尖らせた口元。

繋いだ手を、ブンブンと揺らすと「ガキか！」って笑われる。

「A」
「んー？」
「楽しいな」
「え？アハ、うん」

付き合って結構な時間が過ぎた。
それでもまだ、カズにこんなコト言われたら嬉しくて胸がザワザワする。

「籍、入れよっか」

え？

彼の横顔を見たら、全然私の事なんか見て無くて。
でも、その耳は真っ赤で。

「...もう一回言って！」
「だめー！聞いてなかった人にはもう二度と言いません！」
「聞いてたから、もう一回！」
「聞いてたならもう良いだろ！」

嬉しそうな私の声と面倒臭そうなカズの声が、白い息と一緒に夜の町に溢れ出る。

・・・・・END・・・・・