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季節が巡り、また春がやって来た。
雅紀くんと出逢った季節。
また、たくさんの学生が雅紀くんと出逢ってしまう。
「いってきまーす」
「うん、いってらっしゃい」
平気な顔して見送るけど、本当は不安で仕方無いなんて言えるはずが無い。
「...さ、仕事しよ！」
無理やり大きな声を出して書斎に戻り暫く仕事をして、喉が渇いてキッチンに行くとそこに小さな手提げ鞄。
お弁当箱を入れてる、ミッキー柄の。
「雅紀くん、忘れてる！」
せっかく今日は唐揚げ弁当にしてあげたのに！
チラっと時計を見ると、まだお昼前。
今から届けたらご飯の時間には間に合いそう。
「......」
私はちょっとだけ念入りにお化粧をして、家を出た。
電車に揺られ、窓の外に流れるのは懐かしい景色。
数年振りに大学の前に立つと、妙に緊張した。
どこに居るかな？研究室かな？と考えながら、見慣れた構内を歩く。
好きな人の姿は、どれだけの人混みでも、距離が遠くても見付けられるものだとよく言うけど。
あれは本当だ。
私は大学生の頃から雅紀くんの姿はどんなに遠くに居たって、見付けてた。
「いた...」
あの時の気持ちを思い出す。
研究室の前に、彼が居た。
黒いスーツを着た男性と立ち話して、楽しそうに笑ってる。
「あれ？Aちゃん！」
雅紀くんが私に気付いて、パァっと笑う。
それと同時に、男性もこっちを見る。
「御無沙汰してます、櫻井先生」
私が言うと、国文学科の准教授である櫻井先生は口の端を綺麗に持ち上げ微笑んだ。
とにかく見目麗しい人でとても理知的で素敵なんだけど、先生の授業はすっごく厳しい事で有名だった。
「お久し振り。作品見たよ、活躍してるようだね」
「活躍だなんて、そんな...！まだまだ全然です」
「ハハッ、すぐに謙遜するのは旦那と似てるな。じゃ相葉さん。俺、行くわ」
櫻井先生がくるりと背中を向けた。
「バイバイ、翔ちゃん」
雅紀くんの声に、櫻井先生は振り返らずに軽く手を挙げる。
「フフッ、俺とAちゃん似てるって」
「似てないと思うけどなぁ...」
「だって翔ちゃんが言うんだよ？絶対だよ！」
ヒーローでも見るような目で、櫻井先生の背中を見送ってる雅紀くんに「あ、そうだ」とミッキーの鞄を差し出す。
「あれ？お弁当」
「雅紀くん、忘れてたよ」
「ホント！？気付かなかった！わー、ごめん！」
鞄を受け取った雅紀くんが、「Aちゃん、ありがと！」って頭を撫でてくれた
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
