かつて死んだ彼女の名前【鬼滅の刃】

弐 ページ20

｢本当ありがとう!｣


『いえいえ。怪我がなくて良かったです』


｢でも、怪我....｣


ふと見ると四月一日の腕からは血が出ていた。

さっきの刀で切ってしまったのだろう。

すると、伊黒が彼女の腕に包帯を巻いた。


｢勘違いするな。甘露寺を守ったからだ｣


そう言い包帯を巻く伊黒に甘露寺はキュンとした。



夕暮れとなり3人はそれぞれの帰り道へと行く。

甘露寺とは途中で別れて2人だけとなった。
気まずい空気が流れる。



嫌いだ。嫌いだ。大嫌いだ。

葬儀屋なんて嫌いだ。
死体を扱う仕事なんて死臭がして気が知れない。

変人が多くて甘露寺を近づけたくない。

それに葬儀屋をまとめるあの能面の女は特に気に入らなかった。

あの人に似てないのに重ねてしまうのが気に入らなかった。


｢蜜璃ちゃん守ってあげて｣


あの人は苦手だった。調子が狂う。
....優しく強く憧れた。

鬼と仲良くなんて幻想をよく言う人だった。


『そろそろお別れですね』


葬儀屋の声にハッとする。もうそんなに歩いていたのか。

血のように真っ赤な夕焼けが葬儀屋を照らす。

こいつが影になって暗い。


『約束...守ってくれてる?』


｢え｣


そいつがお面を外すと青い瞳がある。

やっぱり...あんたか。


｢やっぱりあなたは苦手だ｣


『よろしく言っておいてくれない?』


表情はよく見えなかった。

俺は柄にもなく頷いた。
一つぐらいなら約束してもいいか。

あの人はさうどお面を被り振り返らずに歩いていく。

俺も振り返ることは無かった。



｢蜜璃ちゃん。あなたは素敵な人だよ｣


私に会う度にあなたは言ってくれましたね。

私なんかより素敵なのに。

柱の中で一番年長で強くて綺麗なあなたはよく笑いました。
だから私も笑うんです。

葬式の時も悲しくて悲しくて涙が止まりませんでした。

なんであなたみたいな人が亡くならなければいけなかったの?



『四月一日Aです』


最初びっくりしたわ。名前が一緒なんだもの。

でも、名前ぐらい同じなんてよくあることよね。

Aちゃんを見る度にあなたの事を思い出すの。重症よね。

何もかも違うのに。


『蜜璃さんは素敵な人ね』


｢え?｣


『ごめんなさい。いきなり...』


いきなり言われれビックリしたんじゃなくて、あなたと重なって────────

やっぱり私重症ね。

全然違う人とあなたと重なるなんて。

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