跪き【爆豪勝己】 (ページ17)

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滑稽 16 ページ17

爆豪side

そいつは、強かった。俺は彼奴に一発しかお見舞いする事なんて出来ず、意識を手放した。次、目がさめる時は視界の中にそいつがいて、隣のベッドを見ればデクが寝てる。こんな居心地の悪い所誰がいるか、そう思ってさっさと荷物を片付けて帰ろうとしたら、あいつはついて来た。

馬鹿にしてぇのか、こいつ。最初の威勢はどこだ。弱っちいんだよと笑いに来たのか、そう思ったら悔しくて、悔しさでどうにかなっちまいそうで涙目になりながら、叫んだ。

俺が想定していた言葉はなく、逆に賞賛の言葉が聞こえ、そして“ あいつ自身への自虐の言葉 ” が出ていた。

「爆豪君はきっと…ヒーロー向きの良い個性って言われたんだろうね…私は、そんな事言われなくてさ。そりゃあ毒だもの、これだけ聞いたらイメージ良くないし、私の個性はある一定の人物には効く毒、みたいな感じに便利じゃない。…もちろん、親に凄い怒られたよ。めっちゃ殴られた。……正直一番最初死んでやろうとも思ったよ。自分が酷く嫌いだった。

でもさ、なりたいんよね。ヒーローに、なれる訳ないけど、そうやって夢持つぐらい良いでしょって話。」

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いつもみたいにムカつくような感じはしなかった。その言葉一つ一つに、感情が込められてるのがなんとなくわかった。こいつもこいつなりに、頑張ってんだと、そう思った。

なりたいんだよね、ヒーローに。そうやって言うあいつは誰よりも、弱々しく見えた。俺より身長が高えのに。弱かった。そして、その時にあいつの顔を初めて見た。いつも少し前かがみになってて見えねえし、戦闘訓練の時もパーカーとガスマスクが邪魔して見えなかった。

深い群青色の紙。俺より色素の薄い、赤い目。

直感的に、好きだと感じた。