Ki 29 ページ29
「っ!」
ふわっと香る、よく知った香り
その香りの持ち主と、仕事以外の距離でこんなに密着することなんてない
だって・・だってお前は
信じられなくて、伏せていた顔を思わず上げると、思っていたよりもずっと近くにその端正な顔があり、
漆黒の瞳がまっすぐに俺を見つめていた
「また、そうやって俺の返事も聞かずに自己完結すんのかよ・・・あの時みたいに」
「え・・」
その事実を信じられなくて、瞳を見開いてまた藤ヶ谷を見ると、俺を見つめかえした藤ヶ谷が、
ぎゅっと腕に力をこめたのがわかった
「俺だって、北山が好きだ。好きだったよ・・ずっと」
藤ヶ谷が、俺の事を抱きしめながら、小さく、だけどはっきりとおる声でそう言った
「っ・・・!!」
一瞬、何を言われたのかわからず、思考が完全に停止した
だけど、目の前の藤ヶ谷は、笑うでもなく、怒るでもなく、ただ真剣な表情で俺を見つめていた
フリーズした頭を何とか働かせようと必死でもがいた結果、やっとのことで口から出た言葉はひどいものだった
「え、ウソだ・・だってお前、俺の事すげー避けてた!!」
「避けてたんじゃねーよ、その・・・なんていうか・・」
藤ヶ谷が、何かを思い出すように、ちらっと下を向いた
「北山が・・誰にでも、優しくするの見てんのが、嫌だった。メンバーだけじゃない、大倉君や、スタッフさんや・・
お前はすぐにだれとでも打ち解けて、すぐに・・無邪気に笑顔を見せるから・・」
藤ヶ谷は、そういうと、ばつが悪そうに一瞬だけ俺を見た
「その・・北山が・・いろんな奴に好かれてんのも嫌だった」
そういって少し不機嫌な表情で唇を尖らせた藤ヶ谷は、いつも通りキレイな顔をしているのに、なぜかとても可愛らしく見えてしまう
まるで、小さい子供が母親にいらずらを窘められたときのような表情だ
クールだとかセクシーキングだとか言われているけれど、実はこういう一面があることも、俺は知っている
知っているし、そこも、コイツの魅力だと思うから
「ねぇ・・藤ヶ谷もしかして、それって嫉妬?俺に妬いてくれたの?」
きっと、俺にこんなこと言われるのは嫌だろうなと思いつつも、照れた様に拗ねる藤ヶ谷が見たくて、つい口に出してしまった
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2020年1月7日 21時