Ki 15 ページ15
「藤ヶ谷っ・・!」
その声も、吐息も、
全部お前のものにしてほしいのに
その言葉が言えない
求めてはいけないのに、お前を求めてしまう
愚かだと分かっていても、
お前が欲しいと、心は叫び続けている・・・もうずっと、あの日から
「っ・・・」
俺の腰のあたりをゆるゆると撫でていた藤ヶ谷の手が、一瞬止まった
そのまま、さっと距離を取られて、拘束されていた手首が解放される
「はぁ、っ・・ぁ・・」
いきなり支えを失った身体が、情けなくもバランスを崩して、俺は膝から床にずるりと雪崩落ちた
「おっはー!遅れてごめんねー、あれ?」
バタンと開いた楽屋の扉
玉森が、いつも通りの柔らかさを纏って、顔を出す
「はよ」
その横を、あっという間にすり抜けて、藤ヶ谷は硬い表情を張り付かせて、入れ違うように楽屋を出て行ってしまった
その背中を、整わない息のままで、ただ見つめていた
「ミツ・・?ミツ?どうした?そんなとこで・・」
床にしゃがみ込んだままの俺を、玉が不安そうな目で見下ろしていた
「具合でも悪い?」
「あ・・いや・・」
差し出された玉森の右手
その目は、本当に心から俺を心配している目だ
「ごめん・・平気だから。わりぃな、心配かけて」
膝にぐっと力をこめると、あえて玉森の手を取らずに立ち上がった
「ちょっと、トイレ行ってくるわ」
腑に落ちないといった玉の横顔を見ないふりをして、俺も楽屋から逃げるように飛び出した
ずんずんと廊下を進みながら、トイレの個室に逃げ込んでうなだれた
今・・玉の手を取らなかった自分に、嫌気がさす
ぎゅっと手のひらを握り込む
藤ヶ谷に触れられた手を、その感覚を、ちょっとでも覚えていたくて・・・
藤ヶ谷の感触を上書きされたくなくて、俺は純粋に心配してくれた玉の手を拒絶した
「なにやってんだ・・俺・・」
呟いたその言葉を、かみしめるように奥歯を噛むと、口内にはまだ、ほのかに藤ヶ谷の煙草の味がする気がした
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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2020年1月7日 21時