だから、俺の隣で泣いてほしい

Ｆ２ ページ2

「今度、君のところの北山君と一緒に仕事することになってね。彼、面白いし、好青年なんだね」

「あ・・そうなんですか、お世話になります」

「よかったら、今度北山君も一緒に、食事でもどうかな？彼も、いきなり僕と一緒より、君がいたほうが安心だろうし」

「あ・・」



アイツは、俺がいたって、安心なんかしないと思うけど



「ありがとうございます、北山も喜ぶと思います！！」



心の中に曇った靄とは全く違うことがすんなりと口をつく
俺も、随分と嘘が上手い嫌な大人になってしまったものだ


「じゃぁ、また君たちのマネージャーさん通して日程お伝えするよ」

「ありがとうございます、失礼します！」


深々と、再び頭を下げて、遠ざかるその人の背中を見送った





また、アイツか

昔は、どんなことでも、アイツと二人だった

だけど今は、みんなアイツに相談するんだよな



北山は、誰とでもうまくやれるし、愛想もいいし、機転もきく
人懐っこいから、年上にも可愛がられるし、面倒見がいい分、年下にも人気がある


それは、アイツの長所なんだろうけど

アイツが・・そういう奴だって知っているし、そういうところだって好きなくせに


心が落ち着かない




八方に、その魅力を振りまいて、老若男女問わずに、魅了していくお前が
不安なんだよ



誰もいなくなった喫煙所でたばこの煙をふっと空に吐き出した

白い靄が、誰の目にも触れることなく、空に吸い込まれて消えてなくなっていく

あぁ、まるで報われない俺の思いのようだと自嘲した



北山が、誰とどう過ごそうと、誰を思って、誰のために泣こうと
俺が口を出せる権利はない

だって、俺達の関係は

ただの仲間、シンメ、相方


それ以上でも、以下でもないから



アイツは、俺のモノにはならないと、確信している



好きだと、愛していると伝えればいいじゃないかと

きっと、他人の恋愛ならばそういうかもしれない


だけど、長年温めてきたこの思いは、いいだけ拗れて、今更口にするのが臆病になってしまった

第一、俺は一度北山に振られているようなもんだ

いまさら、叶うこともない、この願い

好きだと、くりかえすほど募って、永遠になる


「大好き・・・」



あの、無邪気な笑顔を思い浮かべて、本人には絶対に言えない思いを口にしてみた

好きすぎて、嫌になる

こんなに、溺れているのに



「なんで・・かな・・」


その思いは、煙と共に、空へ消えた

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