それは、タカラモノ 〜第四章 最愛〜

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ガヤの記憶が戻ったと聞いて、安心したけれど
それに伴って、ミツの体調は今までが嘘みたいによくなっていった




すっかりいつもの大食いなミツに戻ったし、夜もそこそこ眠れるようになったのか、
どす黒いクマをこしらえてくることもなくなった
今まであった、ミツのふわふわの頬袋みたいなほっぺも、徐々に肉付きが戻ってきて

なにより、ミツが俺たちに向けて笑う眼差しが、今まで見ていたミツのようなキラキラした笑顔で
俺は心の底から安心した



そんな日々を過ごしている時に、ガヤから病室に来てほしいと頼まれた

少しだけ、緊張しながら、ガヤの病室をノックした



「どうぞ」


いつもどおり、シュッとした、ガヤが爽やかに微笑む

ガヤも、かなり回復が進んでいて、もう来週には退院できるかもしれないと言っていた
青白かった顔色も、徐々に血色がよくなって、ほとんど食べれなかった固形物も、
少しずつ通常の食事がとれるようになってきたと言っていた


「どう・・したの？」

「ふふ、そんな怖い顔しないでよ」

「や、だって・・わざわざミツがいないときにきてっていうから・・」

「ん・・俺さ、ニカに謝りたくて」

「え・・」



俺のほうを真っすぐ見た、ガヤの目が、少しだけ揺らめく



「俺が・・・記憶を失ってるときに、必死に呼びかけてくれたでしょ。北山を助けてって」

「え・・おぼえて」

「うん・・なんとなくだけどね」

「・・がや」

「ごめんな、お前にも・・みんなにもたくさん辛い思いさせたね」

「っ・・・・」




予想していなかった、ガヤの言葉に、不覚にも表情が歪んで、水滴が頬を伝った



「ありがとな、ニカ・・」


そう言って俺の頭をポンポンと優しくなでてくれたガヤは、やっぱり俺達のお兄ちゃんで、
かなわないなぁとおもった

俺も、そこそこに年を重ねて、少しはガヤ達に近づけたかなぁなんて思っていたけど、
こうやって、ガヤの膝で涙を流してしまう俺はやっぱりまだ子供なんだと



「うぅ・・」

「よしよし」


それと同時に、ミツや、ガヤや・・・わったーのお兄ちゃん組がいる俺達は、
もう少しだけ、やんちゃな弟でいても許してほしいなと思って、
甘えるように、そのまま泣き続けた


ガヤはずっと、優しい手つきのままで、俺が泣き止むまで待っていてくれた


なんだか、ここずっと、溜め込んでいた不安や恐怖
いろんなものが涙と共に吐き出されていく気がして

こころがふわっと、軽くなった気がした

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