±10cmから見た日常 (ページ7)

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side F ページ7

「じゃ、俺先行くなー」

ヘラっと効果音がつきそうな、フワフワした北山入りの俺が、玄関へ向かった
なぜ、俺の体であんなにチャラいんだろう…

その背中に向かって思い切り、アレを投げつけた

「いてぇ！」

チャリンっと鈴をつけたそれが、フローリングに落ちた

「おまえ、それないと入れねぇだろ…」

北山は、背中をさすりながら、ソレを床から拾い上げた

「かぎ？」

「俺の家の部屋の合鍵」

まじまじと、それを見つめた北山がつぶやいた

「俺、今日も…ここに帰ってきていいの？」

「…仕方ねぇだろ」

　そっぽを向くと、後ろから、北山が、ポンポンと頭を撫でてきた

「藤ヶ谷、サンキューなっ！」

そう言って笑った、その笑顔は、よく目にしていた、きらきらの北山の笑顔のようだった

「お前、俺の姿でくれぐれも変なことすんなよ」

「わかってるよー」

そういうと、チャリンと音を鳴らしながら、北山は踵を返した

「じゃあ、一日藤ヶ谷堪能してくるな〜」

軽いテンションでそういうと、鼻歌交じりに、玄関へ消えていった
まったく…カードキーじゃなくて、お前の首に鈴つけてやろうか

「あー、藤ヶ谷っ！！」

「なんだよ、早くいけよっ！俺で遅刻すんな！」

くるりと振り返った北山が、俺を見て目を細めた

「今日頑張ったら、背中、流してやるなっ！」

「な…」

子供かよ、俺は

てか、それって…

想像すると、頬がポッと熱を帯びた

性格も、見た目も、同じところを探すのが難しいくらいに、正反対の俺たち

ひょんなことから、体が入れ替わった
俺たちの、

日常が、騒々しく幕を開けた