意地っ張りな君へ

side F ページ16

「俺・・なにやってんだろ・・」





さっきまで、北山が来ていたジャケットを見つめても、俺の知らない香りが漂うだけで、
その持ち主を失った喪失感だけが際立って俺の心をえぐった

アイツと…アイツの、ただ側にいたかっただけなのに





「・・さいあくだよ・・・」







スマホの画面を確認してみたけれど、やっぱり北山からの連絡はなくて、

鳴らないスマホの着信を待つ苦しさに耐えかねて、電源を落とす


気づけばすっかり冷え切っていた身体を温めようと、バスルームへ向かうけれど、心のまどろみまで、洗い流してはくれないことを知っていた


濡れたシャツをぬいで、
洗濯籠にふと目をやると、まだ洗っていなかったアイツの靴下が丸まった状態で入っていて、

ただそれだけなのに、涙が一すじ頬を伝った











靴下脱いだら、ちゃんと伸ばしてから洗えって！何度も言わすなっ！！


俺が、そう怒ると、注意された子供のように、わかったって〜といたずらっぽく笑った北山



その笑顔が、もうずいぶん昔のように思い出された




あの笑顔を、独り占めしたい

その願いは、俺を嫉妬という鎖で縛り付けるんだ

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