足の怪我 8 (潤) ページ32
潤Side
翔「けっこう深いところに溜まっちゃってんのかな…
これだけ痛みがあるとなると、
早いとこ外に出してやった方がいいかもよ。
どうする?」
智「翔が必要だと思うなら、僕はそれでいいと思うよ?
膿溜まったままじゃ痛み引かないでしょ。」
翔「そうだね…。
明日俺当直だから、やるなら今からだな。
さすがに家だとメスもないし、病院行かな…」
潤「ちょっ、ちょっと待って!!」
黙って聞いてれば、何この会話。
俺の意志は?
俺の意見は?
なんでどんどん話が進んじゃってんだよ。
潤「なに…? なにすんの?」
翔「ん? 爪の間が化膿しちゃってるから、
ちょこっと爪を切除して、
膿を出しちゃおうかなと思って。」
潤「それ……痛いんじゃ…」
翔「う〜ん…まっ、大丈夫だよ。
麻酔するしさ。そんな心配すんなって。」
トントンと強めに背中をたたかれ、
唖然としてフラフラな俺は
それだけで前後にグラングランと揺れた。
そんなサラッとすごいこと言われて、
そうですかって簡単に頷けるわけがない…
潤「俺は…くすり、もらおう、と……」
翔「もう薬だけじゃ厳しいよ。
早いところ出しちゃったほうがいい。」
ボソッと抵抗の言葉を言ってみても、
翔にぃに一蹴されて終わり。
智にぃはもう準備に行っちゃったし、
もうどうしたって逃れようはないらしい。
潤「麻酔したら……痛くない?」
翔「うん。
ただ、麻酔自体がちょっぴり痛いけどな。」
でも一瞬だから大丈夫、って付け足した翔にぃ。
一瞬だって痛いことには変わりないんだ。
その一瞬を迎えるまでに、
どれだけの覚悟がいると思ってんだよ…
智「大丈夫? 酔った?」
案の定、病院に近づくほどに吐き気がしてくる。
車の中で顔色が悪くなっていく俺を
隣に座っている智にぃが心配してくれているけど、
車酔いではないとわかってからは、
背中を撫でていた手を
強く握りしめられた拳の上に重ねてくれた。
特に声をかけてくるわけじゃないけど、
大丈夫…大丈夫…って、
重ねられた手がゆっくりポンポンと動く。
それは、処置室のベッドに寝かされてからも変わらなくて、
智にぃの手の温かさに集中しているときだけは、
うるさい心臓も少しは落ち着いてくれていた。
翔「さて、準備はいいかな?」
医者の顔で微笑んでいる翔にぃが近づいてくる。
あぁ、またドクドクしてきた。
もう限界まで高まってるよ、俺の心臓。
ある意味、準備万端だ…
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年5月17日 17時
