えまーじぇんしー 10 ページ46
翔Side
重い瞼を開くとカーテンの隙間からは光がもれ、
外は明るくなってきていた。
横を向けばおでこに冷えピタを貼られた
雅紀とAが目に入る。
ふと自分のおでこにも手を伸ばしてみると、
まだ貼られたばかりなのか
水分を多く含んだ柔らかい感触が指に伝わってきた。
首筋を触ってみるとまだ少し熱いが、
昨日の晩と比べれば下がっているだろう。
まだ重いだるさは残っているものの、
身体もだいぶ楽だ。
翔「……すげぇな」
肘をつき身体を起こして左右を見渡してみると、
おでこに冷えピタを貼られた病人が
ズラッと横たわっている光景に、驚きの声がもれてしまう。
薄暗い部屋でかすかにしか見えないけど、
弟たちは落ち着いているようで、それだけはホッとした。
Aもゆいもよく寝て………あ、あれ?
なんでゆいが、智にぃの布団で寝てるんだ?
ってか、智にぃいなくね?
翔「…さ、智にぃ?」
慌てて部屋を見渡してみると姿は見えなくて、
小さく呼んでみた声にも、もちろん返答はない。
トイレにでも行ったのか……
そう思ったけど、
なんだか胸がザワザワして、智にぃを探しに行くことにした。
立ち上がった瞬間、頭がズキンと痛む。
まだ治りかけだからな…
身体も思うように動いてくれない。
それでも今は智にぃの方が心配で、
キッチン、トイレ、2階、と家中を探し回った。
なかなか見つからない智にぃに焦りが増していく。
どこだろう…
まさか、あそこはいないよな…
翔「ちょっ、智にぃ!!」
最後に開けたドアの先に、ようやく見つけた。
洗濯機の横に、
膝を抱えるように横たわっている智にぃ。
その横には数枚のタオルと、誰のだろう……雅紀のかな?
少し汚れた服が、散らばっていた。
そういえば、遠い意識の先で、
誰かが苦しそうにえずいていたような……
夜中、暑苦しいと思っていた時に、
首元と顔を拭いてもらったような気もする……
もしかして智にぃ、寝ずに俺らの看病してたのか?
この人数を、一人で?
そんなの無茶だ……
翔「ごめん、智にぃ……ごめん……」
無理をさせてしまった自分にイラつきながらも、
このままじゃマズイと思い、
だらんとしている智にぃを抱き上げる。
人間、こういう時は力がでるもんだ。
あれだけフラフラしていた足取りも、
今はしっかりしている。
ただ、腕に感じる智にぃの異常な身体の熱さに、
俺の頭の中は後悔と不安でいっぱいだった。
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作者名：ちさ
| 作成日時：2013年5月17日 17時
