パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ46)

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肋骨骨折　8　(潤) ページ46

潤Side

誰かさん達の喧嘩とか、じゃれ合いとか、豪快な笑顔とか。
ここでしか見れないことが、俺にとっては何よりの薬だったりする。

病室でゆっくり休むのも大事かもしれないけど、俺はこっちの方がいい。

「うるさいよ」なんて文句を言ったりもするけどさ。
でも本心では心地よくてたまらないんだ。

翔「ごめん、起こしちゃった？」

布団を和室に移して、疲れていた俺はお先に就寝。

それからどれくらい経った頃だろう。
物音がして目を開けると、隣には布団の上に座って紙の束をめくっている翔にぃがいた。

他の人たちも寝た後のようで、一階はすでに真っ暗。
ということは、それなりに遅い時間のはず。

…まだ、仕事終わってなかったんだ。ごめん、俺に構ってる暇なんてないのに。

翔「いいんだよ。俺の心配は」

潤「え？」

翔「顔。わかりやすいんだから」

身体を俺の方に傾けて布団を胸元までかけ直してくれた翔にぃは、「俺ももう寝るよ」って、ペンライトの明かりを切った。

こんな小さな明かりだけじゃ、細かい文字を見るのは大変だったろうに…

寝ている俺のために電気を付けなかった気遣い。
薄暗い中でかすかに見える顔も、「痛くない？」って胸にそっと触れてくれる手も。

全部に優しさがこもっていて、なんだか泣きそうになった。

本当は、ちょっと痛みはあったけれど。
温かな手がこめかみ辺りをスーッと流れる感覚が、あっという間に眠気を運んできてくれた。

「おやすみ」

意識の片隅で微かに聞こえたその声に、俺も同じ言葉を返す。

…いや、声には出ていなかったかもしれない。
心のなかで返しただけ。

それほどに眠気が強くて、俺はほとんど夢の中だった。

潤「っ…ゲホッ…くっ…」

翔「おっ、大丈夫か？」

そんなとき、不意に出た一回の咳。
その瞬間激痛が走って、息が止まり身体が硬直した。

翔「ん…酷くなってきたね…」

身体を丸めたいのに自由に動かせないのが辛い。

翔にぃは胸の真ん中を擦ってなんとか止めようとしてくれているけど、厄介な咳は一度で出だすと止まらなかった。

翔「もう少し頑張ってな…。
…あ、もしもし。遅くにごめん」

力の入った身体から、ジワジワと汗が滲み出してきた時。
痛みと苦しさでぼやけた視界の中、翔にぃが誰かに連絡をしているのが見えた。

それから足音が聞こえて和室の扉が開くまではあっという間。
ドタバタしながらもフニャッと笑った顔がはっきりと見えた時、不思議なほどに安心した。