パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ45)

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肋骨骨折　7　(潤) ページ45

智Side

一人で食べられると言っていた潤だけど、食欲がないのか食べるのに時間がかかってしまって。
結局は雅紀が手伝いながらチビチビと食べている。

先に食べ終えた僕らはお風呂に入る準備。
ただ一人遅くまで仕事をしていた働き者が帰ってきたのは、そんな頃だった。

智「おかえり、和。遅かったね」

和「ただいま～。帰り際に電話かかってきちゃって。急患診てたから。潤は？」

疲れた顔をしながらも、潤の心配は忘れない。
仕事中もずっと気にしていただろうね。

和の方が弟に見えることはよくあるけど、あの子も一応お兄ちゃんだから(笑)

智「あれ？もう戻ってきたの？」

和「だって、雅にぃが」

潤の元へ走って行ったと思ったら、すぐに僕のところに戻ってきた。

雅紀に追い返されたって。
今日の雅紀は「俺の！俺の潤！」って言い出しそうなほど張り切ってお世話してるからね。

ちょっと不機嫌そうなのは…嫉妬してるのかな(笑)

智「ご飯用意するね～。あ、そうだ。ぶどうもあったんだ」

和「ぶどう？ぶどうだって、雅にぃ」

雅「えー？なにー？」

和「ぶどう。雅にぃ好きじゃん。食べる？」

雅「今それどころじゃないからいいや。潤のご飯が先ね～」

和「ふーん…じゃあ俺が食べる」

ぶどうの房からまんまるな大きな粒を一つもぎ取った和は、皮を剥いた果肉を口に入れてモグモグ。

寂しいんだろうな～って思いながらも、僕は突っ込まずに夕飯の準備をしていた。

和「手ぇベトベト。何か拭くもの…あ、こんなところにいいものが」

雅「あっ！ちょっと和！」

でもやっぱり、和は誰かにかまってもらいたかったみたい。

ぶどうの汁でベトベトになった手を、雅紀の背中に擦りつけてニヤリ。
最初雅紀は驚いていたけど、和の顔を捉えてからはジッと見つめたまま動かなくなった。

僕の頭にははてなマーク。和も困惑した様子で目を泳がせている。

雅「かず」

和「な、なに？」

雅「ちょっとお辞儀して？」

和「お辞儀？なんで？」

雅「いいから」

そうか。そうだよね。
雅紀が大事な弟の気持ちに気づかないはずがない。

和「ちょっ、なにするんだよぉ！ばかぁ！」

雅「あひゃ。和、今日もお疲れさま」

わけも分からず頭を下げた和の髪の毛を、わしゃわしゃと撫でた雅紀の手。
それを思いっきり払った和も、満面の笑みの雅紀につられて照れくさそうに笑ってた。

雅紀がお兄ちゃんになる瞬間。2人にしかない雰囲気。
それが僕は、とっても好きなんだ。