小学生のまーくん 1 (雅) ページ1
雅紀Side
「今年もよろしくお願いします」
長めのストレートの髪を後ろで一つにまとめた、端正な目鼻立ちの女性がペコリと頭を下げてくる。
20代って言っても通用しそうなほど若々しいこの人は、話を聞いた限りでは歳は見た目よりずっと上。
うちのお医者さん組と同じ大学出身だって知ったのは去年のことだったかな。
学部は違うけど和と同じ年の卒業。
ちょっとした共通点があるだけで、急に親近感がわくから不思議だ。
雅「今年は32人の一年生が入学したんですね〜
わ〜、個性的な名前がたくさんだ」
渡された生徒の名簿をパラパラとめくりながら、最近の子の多いっていう…キラキラネームだっけ？
こ〜れは漢字に弱い俺には読めないなっていう名前がズラリと並んでいることに、少々苦笑いしてしまった。
可愛いと思うんだけどね。
読めなかったり読み間違えたりしたら苦情くるのかなとか思ったらつい、さ。
「2年生が終わった後と4年生が終わった後に休憩の時間を取ってます。
あ、でも嵐谷先生が好きなときに休憩を入れて頂いて構いませんので」
雅「いいですよ、休憩なくても。
でも記録取るのは先生だから、手が疲れちゃうかな」
今日は小さな小学校の歯科検診。
目の前にいる綺麗な保健室の先生は、「いえいえ、私は大丈夫です」ってはにかむように笑いながら顔の前で手をふっている。
「休まなくて平気ですか?」って心配そうな顔をしているけど、ここはマンモス校みたいに一学年に何クラスもあるわけじゃないし、休憩なくてもなんとかなりそうな気がするんだよね。
去年も一昨年もこの学校の検診を担当してるけど、毎年けっこう余裕あったし。
「では、様子を見て休憩を取るということで」
雅「そうですね、そうしてもらおうかな。
急に疲れがきちゃうかも。俺ももうおじいちゃんだから」
「またぁ、まだまだ若いじゃないですか」
養護教諭と校医としての会話だから真面目な感じにしてたけど、やっぱり人とは笑って話している方が楽しい。
今だってそうだけど、俺の冗談に破顔した先生と二人でフフフ、ハハハって笑ってたら、今日も充実してるなって思えるしね。
「嵐谷先生。今日はよろしくお願いいたします」
雅「はい、よろしく…え?」
控室から移動しようとしていたとき、スーツを着た男性が入ってきた。
俺、この人、見たことある…
雅「もしかして…井ノ原先生!?」
「お久しぶりですね、嵐谷先生。いや、雅紀くん、かな」
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作者名：ちさ
| 作成日時：2014年6月28日 23時
