パパが治してあげようね *ARS* 12 (ページ2)

今日:17 hit、昨日:7 hit、合計:690,142 hit

小学生のまーくん　2　(雅) ページ2

雅紀Side

井「会うのは何十年ぶりだろうね。立派な歯医者さんになったんだな～」

驚いて口をポカーンと開けたまま固まっている俺に、昔と変わらない笑顔で目を細めている目の前の人。

感動しちゃって泣きそうになる。

涙腺緩くなったな、俺。
いや、昔から泣き虫ではあったんだけどさ。

雅「お久しぶりです。いや～ほんと…びっくりした～」

井「今年からここの校長職に就くことになってね。
校医さんの名前を見て、すぐに雅紀くんだってわかったよ」

優しくて、よく笑う人で、幼いころの俺はよくその足にしがみついていたのを思い出す。

木登りするみたいに身体に腕を回してくっついて、「雅紀くん重いよ」って困った顔をさせてた。

俺らの遊びにもよく付き合ってくれる先生でさ。
『子供が好きだ』って思いが溢れ出てた。

だからこそ俺も、担任の先生で木登りするなんてことができたんだろうな～
今思えば失礼なことしてたなって反省だけど。

雅「俺のこと覚えてたんですね。やっぱ先生ってすごいな～」

井「教え子の数は1000人に近いだろうから。
全員覚えてるかって言ったら…それは自信がないけれど…」

今までの教え子たちのことを思い出しているのか、斜め上を見ながら少し渋い顔をした先生は、俺に目線を移したかと思ったら思ってもいなかったことを言い出した。

井「ほら、雅紀くんはさ、印象的な子だったから。
よく動いてよく喋って、よく笑ってよく泣いて。
面白い子だったよ。とっても素敵な子だった」

雅「そ、そんなやめてくださいよ～。照れちゃうなぁ」

素敵な子だなんて言われると思ってなかったから身体がむず痒くなってしまう。
ボリボリと腕や首をかいて肩をすくめた。

「いや～ほんとに、あの雅紀くんがね～
歯医者さんになるなんて思わなかったな～」

「あんなに泣いてたのにね」って笑う先生に、隣の女性が「そうなんですか?」って興味深そうに話の続きを促す。

雅「あー!! それ以上はダメですよ!! 俺と先生だけの秘密にしましょう、ね?」

「えー、どうしようかなぁ。あれは…3年生の時だったね。
智くんと翔くんだったかな? お兄さんたちが泣いてる雅紀くんを…」

雅「わーわーわー!! シー!! 先生、シィー!!」

俺をからかうように話し続ける先生の唇の前に人差し指を出して言葉を遮る。

たしかに、そんなこともあったけどさぁ…。
子供だったといえども、今思い出すと恥ずかしいよ。