七十二話 ページ22
群青の海岸にはシンジュ団に所属するガラナという女性がいる。
しかし彼女には世話をするキングもいなければキングの後継も育っていないため、キャプテンに相応しくないと異を唱える者も少なくはないそう。
散々言われようとも、カイにとってガラナはとても大事な人。
シンジュ団の長の座を巡って色々競い教えてもらった程に仲が良いのだ。
そんな彼女の立場を考える長として、テルにお願いしたいことは一つ
｢ガラナちゃんが連れているキングの後継を鍛えて欲しいの！｣
テルの力ならばキングの後継を強くできるのではないかと考えたカイは彼に力を貸してほしいと願った。
ガラナという1人の親友に異を唱える者を黙らせるためにも
自分にどこまで出来るかはわからないが全力を尽くす事を伝えると、カイは礼を言いながらガラナの居場所を教えた。
そこは先代キングの眠る帳峠という場所
残された者はただ悲しみに暮れる、しかしそれも終わる
前に進むべききっかけがもうすぐやって来るのだから。
しかし、きっかけとなる少年テルはと言うと…
｢ひぃ〜!?｣
どういう訳か時空の歪みをついでに調査してしまおうとした結果、サイドンに追われているのだ。
怒涛の攻撃ラッシュにより手持ちのポケモンを出す余裕すらない状況でいるのだ。
｢助けてAさん…！
いや、ここは一人でやらなきゃダメだ！｣
つい癖で先輩を呼んでしまうが、今は大怪我により療養中の彼女がここまで来れるわけが無い。
だからこそ一人で問題は解決しなければならないのだ。
Aから教わった戦術のひとつを今ここで実践するべきだ。
｢うぉぉぉぉ！これでもくらえっ!!｣
それは相手の視界と嗅覚を鈍らせるには最適と言われている泥団子
彼の優れた投てき能力によりサイドンだけでなく、近くにいたイーブイやレアコイルも泥団子により油断している。
生き残るためには敵を従える力を持たなければならない
覚悟ならとっくにできている、彼はそう考えていた。
｢いけっ！モンスターボール!!｣
3連続で投げたボールに対応出来ずに当たってしまうポケモン
3発小さな花火が打ち上がって捕獲完了の合図が出ると同時に時空の歪みは収まり、周りの景色はいつもの群青の海岸に戻っていた。
丘の上に立ちつくす一人の後ろ姿と二体のポケモン
それは美しく儚げな女性だった
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作者名：またたびはまた | 作成日時：2022年3月1日 11時
