七十三話 ページ23
帳峠の先にたたずむ一人の女性に話しかけようとすれば、隣で大人しく座っていたガーディに威嚇された。
｢およしなさいな｣
相棒の頭を優しく撫でてこちらを見てくる彼女は凛々しい表情を崩す事なく自己紹介をした。
｢あたくしはシンジュ団のガラナ。貴方様は？｣
彼女こそが探していた人物だと知ると、テルは自分が何者か明かした。
どうやらテルの噂は聞いていたみたいで、バサギリとドレディアを鎮めた強者だが存外優しそうな顔をしていると褒めてくれた。
｢幸いなことに群青の海岸にはキングはおりません。高波にさらわれた子供を救うために身を投げ出し海の藻屑となったのです。｣
悲しげな横顔を見せる彼女の頬を舐める2匹のガーディを見てなにか思いついたようだ。
｢そうだ…どちらがキングの子供のガーディだと思われます？｣
突然のクイズに戸惑ったが、これは将来のキングの事を考えてよく見ることにしたのだ。
先程まで威嚇してきたガーディは大きく、大人しくて今にもガラナの足元に隠れそうな小さなガーディ。
意外と小さい方がキングの子供だったりして
そう思い視線を低くして小さなガーディに近づくと、できるだけ怖がらせないように指先を鼻に近づけた。
｢優しい君がキングの子供…ですかね？｣
｢まあお目が高い、そちらが先代キングの子供なのです。｣
か細い声で鳴くガーディの頭を優しく撫でていると、ガラナは自分の心情について教えてくれた。
｢キングたる資格の持ち主ですが、この子は父の死を目の当たりにして心に深い傷を負いました。
それを無理やり鍛え次なるキングにするなど…あたくしには到底出来ませぬ。｣
まっすぐ強い瞳で言う彼女は実際心も強いのだろう。
たとえ同じシンジュ団の仲間になんと言われようとも傷心したガーディのあるがままに生きて欲しいと願うのが彼女なのだろう。
キングの話は終わりだ、あとは火吹き島について知ってることを教えてもらいたい。
｢もうひとつ、聞きたいことがあるんです。｣
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作者名：またたびはまた | 作成日時：2022年3月1日 11時
