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「 …私ね、志麻を思い出したい 」
赤信号で止まって、ちらりとAの方を見ると 真剣な表情で前を見据えていた。
お前… と呟きを零すと、にっこり笑って 俺の方見て もう一度思い出したいの、と。
「 …別に、変わんねぇよ。思い出したところでこうやってふざけ合ってただけだ 」
「 …楽しい記憶だと思うんだ。志麻との思い出は全部。それを忘れてるなんて、私嫌だから 」
「 思い出なんて結局みんな忘れるもんだろ。」
「 でも、忘れるには早すぎるよ 」
何を思ってそんなことを言っているのか。
ただの友達なんだったら、別に思い出さんでもいいだろう。確かに、罪悪感は残るのかもしれないが 友達だって言うのならば俺は こうしてまた彼女をどこかに連れ出したりもしていたかもしれない。
けど、お前が 無理に思い出そうとして 変に俺と付き合ってた記憶を呼び戻したところで、坂田への気持ちと今までの俺への気持ちでぐちゃぐちゃになってこいつが潰れるだけだ。
思い出してほしいけど、思い出して欲しくない。
なんて、やっぱ俺… ほんと我儘だな。
「 いいから!行くの!!!分かった!? 」
「 あーはいはいわかったよ じゃあまず…そうだな 」
「 あっ待って!!! 」
「 今度はなんだよ 」
「 サプライズで連れてってよそっちのが楽しいやん 」
「 くっそわがまま腹立つ、降ろすぞ 」
「 たーいーいーんーいーわーいーーー 」
あの花束用意したん俺やからな、って心の中で毒吐いて はいはいと頷いてみせる。
Aは楽しそうに ふふふー、と笑って ねぇ志麻?と俺の名前を呼ぶ。
「 なんだよ 」
「 …あの花束、すごい綺麗だった 」
「 良かったやん、坂田にそんなのもらえて 」
「 …うん、そやね。志麻とは大違い 」
「 女心は坂田のが分かってんだよあいつ女だから 」
「 坂田が女やったら 私お付き合い出来ひんやんっ 」
「 ? お前男やろ、余裕やん 」
「 しばく 」
「 こっわ 」
あっこ ってどうやって行くんやっけ、場所秘密ってことはナビにも頼れへんから大変やな なんて考えながら車を走らせていた俺は、色んなことに気付きながら 優しく微笑んでるAのことなんて 一切気付いていなかった。
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ざゆ(プロフ) - 本当に本当に本当に最高でしためちゃくちゃ泣きました!!こんなすてきなさくひんをありがとうございます、また何回も読みに来ると思います本当に大好きです!! (2020年8月11日 1時) (レス) id: d0019edafb (このIDを非表示/違反報告)
空っぽのコップ(プロフ) - センラさんに正直に話す所から涙が止まりませんでした。こんなにも素敵な作品を作って下さってありがとうございます! (2019年6月28日 7時) (携帯から) (レス) id: 7582f8fce2 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - ぷりん畑さん» お返事遅くなって申し訳ありません。私の作品なんかで涙を流してもらえるなんて光栄です!ぜひrecoupを聴きながらまたこの作品を呼んでもらえると嬉しいです! (2018年6月7日 3時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
ぷりん畑 - お友の紹介で読み始めたんですが、夢主事故った位からずっとうぅうぅ泣きながら読んでました。またrecope聴きたくなりました。大好きです。 (2018年5月25日 22時) (レス) id: ddc5e690a1 (このIDを非表示/違反報告)
零生(プロフ) - 葵香さん» 素敵な曲ですよね、あの曲私大好きです(*´ω`*)ご覧いただきありがとうございました! (2018年1月18日 1時) (レス) id: c45c7990b9 (このIDを非表示/違反報告)
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