Remember Loving 【志麻】

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居酒屋に入れば 運良く個室に案内され、とりあえず 生ビールと適当なつまみを頼んで乾杯する。

最近 飲む元気もあまり無く、久しぶりに飲んだビールが思いの外苦くて 少し顔を歪める。
それでも、その苦さが 何かを落ち着かせてくれる気もして。

変に飲んでいたら、もしかしたらアルコールに溺れていたかもしれないと思うと ゾッとする。俺は、近くにあった枝豆を手に取り センラくんに話し掛けた。




｢ んで、愚痴って…仕事でなんかあったん？ ｣


｢ んまぁ…仕事の愚痴なんて言い出したらキリないっすよ、ほんま。聞く？今日も理不尽なことあってな… ｣


｢ なんだなんだ お兄さんに話してご覧なさい ｣


｢ 志麻兄さん〜 ｣




センラくんの愚痴を聞いて、そういや そんなこと 俺にもあったわー、なんて ビールを飲みながら 言葉を交わす。
いい感じに二人してアルコールが回った頃、センラくんが 俺をじーっと見てから ぽつりと呟く。





｢ やつれたよな…志麻くん ｣


｢ そうか？ ｣


｢ うん。…食べてへんやろ、あんまし ｣


｢ そうかもなぁ…一日一食で満足すんだよな最近 ｣


｢ それ、危険ちゃう？ ｣


｢ …食べたくならんねん ｣




何か食べなきゃってことは俺自身分かってるし、身体も何か食べ物を欲しているのだが 何か少しでも口に入れれば もういいか、と思ってしまうのだ。

まぁ、理由なんて 一つぐらいしか思い浮かばないが。





｢ なぁ、志麻くんはさ… 自分の気持ち、抑え込みすぎなんちゃう？ ｣


｢ そうでもないやろ、結構我儘言ってるつもりやけど ｣


｢ だってAちゃんのこと、まだ好きなんやろ？ ｣


｢ … ｣




記憶を失くした彼女と何度か会っていく内に、気持ちが冷めるなんてことがあるらしい…なんてどっかの記事で読んだから、俺もそういうことにしとこうと思って、

メンバーにはそう説明して、もう気持ちもなんもないから大丈夫 なんて嘘吐いて。

…まぁ、一つは 坂田がもし Aの事を好きやったら 気にせず付き合えるようにってのもあるんやけど、そう口に出しとけば ほんとにその通り好きじゃなくなるんじゃねぇかって思って。



でも、相変わらず 俺の気持ちは変わらないまま。今でも、Aのことを想って 苦しいままだ。




｢ …意外と そうでもないで ｣


｢ 本音 言うてくださいよ ｣




じっと俺の目を見て、ね？と微笑むセンラくん。もしかしたら、最初からこの話をする為に誘ったのかもしれないな…

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