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其の四 ページ5

敦「…武装、探偵社…」

国木田の言葉に敦が考え込む仕草を見せれば太宰が天井を仰いで云う

太宰「まぁ、知らずとも無理はな――…」

ふと、言葉が途切れ四人の宅を沈黙が包む。

国木田「…?如何した、何か――」

太宰「…あの鴨居」

『鴨居?』

太宰が呟いた単語になにか重要性があるのかと三人が太宰と同じように頭を上げて天井付近の鴨居を見れば

太宰「頑丈そうだと思わないかい?そうだね…例えるなら人間一人の体重に耐えられそうなくらい」

実に真剣な声音で太宰が続けた。

『立ち寄ったお茶屋さんで首吊りの算段を建てないでもらえますか?』

太宰「えぇ?Aちゃん知らないの?首吊り健康方だよ?随分有名な筈だけれど」

国木田「何?あれは健康に良いのか?」

『…そんなわけ』

敦でさえ疑わしいと感じる太宰のからかいに食いつきしっかり信じ込んで手帳に太宰の説明を板書する国木田に呆れたようにAは溜息をついた

敦「あ…そ、其れで探偵の皆さんの今日のお仕事は?」

敦の質問に国木田は一瞬周りを伺い、声を低くして端的に云った

国木田「 虎探し だ。」

敦「……虎探し?」

太宰「近頃街を荒らしている人喰い虎だよ。倉庫を荒らしたり、畑の作物を食ったりと好き勝手さ。つい先日、この辺りでも目撃されたらしいのだけど」

がシャン!

太宰が云い終わる前に派手な音がして敦が床に転げ落ちる。

『ちょっと、大丈――』

慌ててAが手を差し出そうとするが敦は尻餅をついたまま後退する。

敦「ぼ、ぼぼぼく、僕は此れで、」

国木田「待て」

走り出そうとした敦の首根っこを目にも止まらぬ速さで掴み、敦の体が宙に浮く。
そんな状態でも敦は切羽詰まったような声で怒鳴った

敦「む、無理だ!奴に人間が適うわけ無い!」

『敦くん、人喰い虎を知ってるってこと?』

敦の言葉にいち早く反応を見せたA。

敦「あ、彼奴は、彼奴は僕を狙ってる!僕は殺されかけたんだ!」

国木田「…何?貴様、人喰い虎と接触しいたことがあるのか?」

敦「…っ、この辺に出たんなら早く逃げないと――!」

敦が国木田の手を振りほどき、逃げようとすれば国木田の足払いに引っかかり床に倒れ、抑え込められる

国木田「云っただろう。武装探偵社は荒事が領分だ、と。…そうだな、茶漬け代は腕一本、若しくは凡て話すかだな」

国木田が手に力を込めるとミシリ、と敦の腕から鈍い音が鳴る。

国木田「小僧」

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作者名: | 作成日時:2023年11月2日 16時

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