羽が10枚 ページ13
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主将さんに言われてAは一歩前に出る。今からは❰自己紹介❱の時間だ。彼女に仲良くする気はないから顔だって見ない。それよりも、見る気がなかった。
「それじゃあよろしく」
主将さんに言われたAは、はい。と返事をして、❰自己紹介❱に入る。
『今日から1週間、バレー部の臨時マネージャーを務めさせていただきます、片桐です。よろしくお願いいたします。』
そう言って頭を下げる。その数秒後、頭を上げた。
「「「お願いシャース!!」」」と部員の大きな声が体育館内に響く。少し、余韻が残った。Aはこの余韻が苦手だった。
主将さんと銀髪さんと長髪さんが1歩前へ出る。
「主将の澤村だ。改めてよろしく、片桐さん」
「副主将の菅原孝支だべ。よろしくな〜」
「2年の東峰旭だよ。よろしくね」
2年生がそれぞれ自己紹介をする。他の部員は1年生のようだった。一週間とはいえ、同じ部員となる。澤村はAに尋ねた。
「同学年の1年は……。名前、わかるか?」
『残念ながら田中、西谷、縁下の3人しかわかりません』
Aは、別に残りの二人に恨みがあったわけでもない。そもそも、Aは興味のないことにはとことんこだわらないから、バレー部の1年は同じクラスの縁下しか知らない。
「そうか。縁下の右隣にいるのが木下…木下久志で…左隣にいるのが成田…成田一仁だ」
『そうですか。ありがとうございます』
Aはまた、自己紹介のときと同じように会釈をした。
「えっと…じゃあどうしようかな……」
澤村は顎に手を当て、なにやら考え出した。
「なぁ、誰がいいと思う?」
菅原と東峰の方を向いて澤村が言う。この人もまた主語がなく、問われた2人はポカンとしている。
「「え、何が?」」
声をぴったりあわせて、2人が反応する。
「いや、マネージャーの仕事を教えるの、誰がいいかなって……」
どう思う?と言う澤村の質問に、問うた本人も、3人揃ってう〜ん……と唸りながら悩む。
結局。
「縁下〜!」
「ハイッ!」
縁下になった。
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作者名:七瀬月華 | 作成日時:2021年7月29日 15時