二十五羽目(?) ページ30
・
「もう大丈夫、風邪がぶり返すこともないと思うよ」
「はーい」
回転する椅子をキーキー回す、視界がグラグラして酔いそうだ。今私は森さん直々の検診を受けている。理由は先日のように体調を崩して異能が操作出来なくなると困るから、だそうだ。
そして、不埒な輩が私を外に連れ出さないように……というのも言外に含まれているのだろう。到底口に出す気にはなれないが
「そういえば君に手紙が届いているよ」
「手紙?」
「そう、異能特務課……ようするに私達を監視する人達からだよ」
「なんで私に……」
「じゃあ、暖かくして寝るんだよ」
そう言って森さんは私の部屋(牢屋だけど)を出ていった。勿論しっかりと鍵をかけてだけど
外に待機していた黒服さん達も一緒に帰っていく足音がする。やがて上へと登っていく足音が聞こえなくなってから、ようやく私は動き出した。
本の背表紙に隠しておいたレターナイフを取り出し、封筒を破る。すると中から暗号の描かれた紙が出てきた。
「これホントに大丈夫なのかな」
この暗号は数年前から変わっていないのだが……まだ利用している辺り安全性は保証されていると思ってもいいだろう
そして先日坂口から渡された箱に解読したパスワードを入力する。中からはありふれたデザインのSDカードが1枚だけ出てきた
たったこれだけの為にこんな大規模な仕掛けを使うなんて、特務課はどうかしてるよ。
でもまぁ良かったよ、予定よりも早く記憶の鍵が解けて内通者も来た
私がここまで上手くやってこれたのはあの時太宰が授けてくれた鍵のおかげ。あれがなければ私はここまで自由でいられなかった。
まぁその実、鍵が開かなければ私は永遠に鳥籠の中だった訳だけど。本当に森さんに関係する人は意地が悪くなる傾向にあるね
部屋の隅にあるおもちゃ箱の中から、一見おもちゃのコンパクトを取り出す。先程のSDカードを入れると、画面に【Now Loading】と出てきた
機械のスペックが良くない分ロードには長い時間がかかる。本当はすぐに終わって欲しいけど、そう上手くは行かないものだ
見つからないように再びおもちゃ箱にしまう。
そしていつものように『私』を演じるのだ
鍵が開かれた今周りを欺き通すのは難しい。
私に、私達に残された時間は残りわずか
「嘘なんかじゃないんだよ」
プラスチック越しに写真の中の彼らの頬を撫でる。
本当に嘘なんかじゃないんだ
愛しているのに、愛していたのに。
魔法にかけられた小鳥は籠の中で夢を見ていたの
そして籠の外の声を聞こうと、今日も耳をすましていた
596人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
七巳流 - 太宰さぁー〜ーーーん (2022年7月10日 16時) (レス) @page34 id: 910d5180ae (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - Юрияさん» コメントありがとうございます!期待に答えられるように頑張ります! (2019年4月29日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
Юрия(プロフ) - とても面白いです!此れからも、更新楽しみにしてます!更新、頑張ってください! (2019年3月17日 23時) (レス) id: f4565d370d (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 山吹晋助さん» 態々返信して頂いてありがとうございます。面白いお話にすることが出来ず力不足で申し訳ないです……そう言って頂けて光栄です。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 19時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - ウナさん» コメントありがとう御座います。これからもよろしくお願いします! (2019年3月8日 18時) (レス) id: 5e06df6d00 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:レイ | 作成日時:2018年9月3日 23時