6話 ページ8
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「あの人喰い虎＿＿＿＿孤児院で畑の大根食ってりゃ良いのにここまで僕を追いかけてきたんだ！」
敦によると、孤児院を出て鶴見川の辺りをフラフラしていた時に虎が襲ってきたそうだ
なら…誰かと一緒に追い出されたってのはなしだな
敦はどこをどうにげたのかも知らず、いつの間にかああなっていたらしい
「それ、いつの話？」
敦に質問を重ねる太宰
彼も、どこかこの話に違和感を感じたのだろう
「院を出たのが二週間前、川であいつを見たのが＿＿＿＿四日前」
「確かに、虎の目撃情報は二週間前からこっちに集中している。それに、四日前に鶴見川で虎の目撃証言もある」
確かに、追いかけられてきた、と云われてもあまり違和感は感じないだろう
＿＿＿＿そのままその情報を捉えれば…ね
でも、決定的に断言できないな…
太宰ならもう何かわかっているだろう
そう考えて太宰に目を向ける
彼はどこか確信を得たような表情だった
「敦君、Aちゃん、これから暇？」
「…私も…ですか？」
一瞬真顔になりかけたが、キョトン、と可愛らしいと思えるような表情を作る
…少し嫌な予感がする
こういうときの嫌な予感は大抵当たるのだ
「虎探しを手伝ってくれないかな」
もっと簡単にわかりやすく云うと、敦を餌にしよう、ということだ
当然だけど、敦は拒否した
だが、彼は承諾することになる
「…？！」
流石に、生活に困っている少年はそれに飛びつくしかないみたいだ
敦はもちろん、太宰の誘いに乗った
彼女も、なぜかついていくことになった
＿＿＿＿＿＿＿＿
太宰は暗い倉庫で本を読み、敦は適当な処に座って待っていた
太宰が何を読んでいるのかは、ここでは伏せておこう
一回読んだけど、読書が好きだと言っている彼女もあまり読む気にはなれない…とだけ
「本当にここに現れるんですか？」
敦が心配をする
それも当然だ
こんな処に“確実に”虎が出ると言われたのだ
何も根拠もないのに
「心配いらない。虎が現れても私の敵じゃないよ。こう見えても私もAちゃんも『武装探偵社』の一隅だ」
なぜか私まで巻き込まれた
本当に虎が出るのなら、彼女も太宰も危ないと思うのだが…なんて言葉は避けておこう
そんな太宰を見て、敦は自信なさげに云った
「凄いですね、自信のある人は。僕なんか孤児院でもずっと『駄目なやつ』って言われてて…」
そんな敦を見ても、太宰は何の言葉もかけない
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