46話 ページ48
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「……」
乱歩は道化になっていくAを見つめる
その姿はいつか自分達には届かない様な闇にまで堕ちてしまいそうで
いや、もう堕ちかけているのか
また、自分には救えなかった人が増えた
彼は殺人事件を解決していくことを生業にしている
殺人事件を解決することは、結局は誰の為にもなっていないかもしれない
もう死んでしまった人達はそれを解決しても戻って来ない
罰を受けることを望んでいるかもわからない
それでも、世界は“正しさ”の為に人を殺すことを悪とし、それを裁く
それが世の中を平和に保つ一種の方法であり、正義なのだ
彼自身、人を助けてはいない
届かない場所にいる人間を助ける、救うなんて不可能だから
それを判っていても彼は事件を解決し続ける
でも、彼女は手の届く範囲の人間
自分が助けれないことに対して何かの感情を感じていた
それでも、彼は彼女を助けれるが、彼女に踏み込めない
____「…其処まで私を知っているのなら、判っているのなら」
____「なんで、そんなこと聞くんですか…!」
彼女はとても苦しそうな顔をしていた
あの時は、流石に踏み込みすぎだと福沢に云われ、少し反省していたが、今となっては後悔している
あの子の演技に気付ける人間は居ない
演技力のある母親の元で自力で磨き上げてきたあの演技力は、あれが本当に演技なのかと自分でも半信半疑になるほどだ
彼女が救われる為にはきっと彼女に踏み込むことが出来る人間がズカズカと踏み入らなければならない
本来は自分もそれが出来る人間なのだろうが…
乱歩は一生懸命に働く彼女を見る
何処か楽しそうな彼女には今の環境が一番なのかもしれない
そう思った
頭脳も、身体能力も、普通の人からしたら反則扱いされそうな程にあるのに、
それを抑え、人間らしく生きる彼女はとても勿体無い
自分みたいにそれを使って彼女も好きに生きればいいのに
君のそれは、探偵社でもそうで無くてもきっと世界の為になるのに
まあ、きっと彼女は母親の為にだけ生きているのでそんなこと気にしてないのだろうけど
「…国木田ー、お腹空いた」
「乱歩さん、すみません、今駄菓子を切らしてて…」
「しょうがないなー、我慢してやる」
まだ、彼女は救えない、救われない
まだその時ではない
その呪縛がある限り、手は出せない
その時が来るまで待つだけ
乱歩は手にあるラムネを一気に飲み干した
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