38話 ページ40
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太宰はAの心をできるだけ傷付けない様に。腫れ物を触る様に触れた
「今日、芥川君と戦わなかったそうだね。自分から撃たれに行って…混乱を招きたかったのだろう…でも、あまり大きな混乱にはならなかった。あの女性の方だけだよ。焦ったのは…結局私がいなかったら駄目だったじゃないか…戦い方、少しは見直してみなよ」
でも、太宰は大切にしたい物を傷付けずにどうしたらいいかわからない
大切な物は簡単に手からこぼれ落ちていく
彼もそれを体験したから。
でも、体験して、そこから学んだものは、大切な物を傷つけてしまうことばかり
彼なりに優しくしたつもりだったが、少しキツい云い方になってしまった
全て気付いている
でもそれを改めて云われることがどんなに辛いか
太宰は目の前にAがその言葉で今どれだけ自分を追い詰めてしまっているのか、それをわかってしまった
だから、話の内容を一旦変えた
「…そういえば、君の両親、借金してるんだってね。どのくらいなんだい?」
「…今は、百五十万。前はもう少し少なかったんですけど、私が返せると思っているのか、何ヶ月か前に七桁にまでなっていました」
「で、それを中也に借りてるんだ」
「…中也?」
「ああ、えっと…知らない?帽子被ってるチビ。多分君より小さいんじゃないかな」
Aは帽子を被っている自分と同じくらいの身長の男性を思い出した
普段借金を返すときに遭っている男性
中原さん、呼ばせてもらっている
最初は中原様、と呼んでいたのだが、様付けは嫌だと云われた
でも両親が彼と遭うとき、様付けで呼ばせている様な気がして、歳下にそう云わせることに罪悪感でも持ったのかな、なんて思っていた
「橙色の髪に青い瞳を持ってる人でしょうか」
「それそれ!あの蛞蝓!!あれが人に金を貸すなんて見たことなかったのに!私にも貸してくれなかったのに!」
「…お友達ですか?」
「誰があんな奴と!!死んだ方がマシだね!」
おえ〜、と吐く真似までするくらいに嫌いなのか…と目の前の太宰をなんとなく見つめる太宰
そこまで悪い人には見えなかったけど…いや、偶然機嫌が良かっただけなのか、と考えていた
「しかも芥川君の話によると、中也にも君脅したんだろ?」
「いえ、中原さん本人ではない…ですが…チンピラがお母様の顔を打とうとしたので」
Aはあの時のことを簡単に思い出す
あれは3年前の頃かな
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