37話 ページ39
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Aの異能、『人間らしい』は、体から糸を出し、それを自由自在に操る能力
糸は太さや硬さには制限があるが、出す時の勢いや長さには制限がない
拘束にはもちろん使えるし、トラップに使用することも可能
体から糸を切ることも可能だが、時間が経てば糸は消える
糸は細く、まあまあ硬いため、便利ではある
なのに精神操作だと思われているのは、彼女自身が普段から陰鬱な部分を押し殺しているため、
普段の明るい姿と素の差で怖く感じているだけ
要するに、本人が持つ雰囲気なのだ
「まあ、異能をあまり使いたがらないAちゃんだし、知られてなくても当然かもね」
「使いたがらないのではなくて、使い道がないんです。使うより効率的なやり方を優先しただけ」
「はいはい、今はそういうことにしてあげる」
Aは戦闘でも、仕事でもあまり糸を使いたがらない
ごく稀に使いはするが、それも年に片手で数えるほど
彼女自身が自身の異能力をあまりよく思っていないのか、それとも普通に使う必要がなかったのか
おそらくどちらもあるだろう
だが、武器と体術だけだと異能力者相手には限界がある
強いが、勿論力は男には劣る
体格だって細い
体力と速度はあっても結局は劣るのだ
今後、ポートマフィアに狙われることもあるかもしれないのに、それではとても生き残れる可能性は少ない
「Aちゃん、君自身は私と同じで裏で指示したりとかのサポートや頭脳戦に向いている。それだけの頭脳は持っているし、判断だって早く的確だ。でも一番は君は体術だけじゃ劣る。君も一人で行動することは当然あるだろう。その時はちゃんと自分の武器を使うんだ」
「…分かってます」
「君だって芥川君のこと見て、今回それを実感しただろう?中距離や遠距離の異能には近付かないと攻撃できないし、近付くまでが難しい。でも糸は使い方次第で移動にも使える。だから、私情とはきっちり分けなよ」
Aはあまり異能を使いたくない理由があった
異能を使おうと考えるたびに、それが頭に過って使えなくなる
Aだって本当はこんなところで働くべきではない子供なのだ
でも、その現場にいる以上、それを乗り越えなければならないことはわかっている
だからこそ、太宰の言葉は残酷なものだったのだ
「…まあ、Aちゃんが異能を使わなくても解決できる策がある場合ならいいよ。今までもそれでなんとかなったから。でも、今日みたいなことがあったら私許さないよ?」
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