21話 ページ23
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「では、太宰さんは?」
Aが敦にそう話を振った
敦は太宰を見るが、ニコッと笑ったその表情からは何も読み取れない
そんな敦を見て国木田は「無駄だ」と云った
「武装探偵社七不思議の一つなのだこいつの前職は」
「最初に中てた人に賞金が有るンでしたっけ」
「そうなんだよね。誰も中てられなくて懸賞金が膨れあがってる」
Aは太宰の前職中てを探偵社の全員で開催した時のことを思い出す
溢者の類や、倶楽部など、様々な解答が出揃ったが、誰一人中てることができなかった
Aは太宰の端麗な容姿から「自身の躰でも売っていたのでは?」と答えた
勿論それは外したが「ふふ、でも何回か仕事の都合で女性とはそんなこともしちゃったことはあるよ」ととてもねっとりした声で云われて、A自身は平気だったがその他メンバーが鳥肌を立てて数人は太宰に何かしらを投げたりしていたことを思い出した
太宰の言葉から「あまり人に云えないことを生業にしていたのでは?」なんてことを思っていたが、
それだったら本人がこうやって前職中てで楽しそうにしているわけがないな、とその考えは捨てた
「俺は溢者の類だと思うがこいつは違うと云う。しかしこんな奴が真面な勤め人だった筈がない」
「太宰さんは仕事で楽したがることも多いし、できるだけ楽して稼げる怪しい仕事でもしてたのではないでしょうか」
「Aちゃんさっきから私のことボロクソ云うけどそんなに気にしてる?昨日のこと」
「昨日貸したタオル、その何日か前に貸してと云われたネクタイ、その他いくつか私の元に帰ってきてない私物があるのですが。弁償か返すかどちらか早くしてくれませんか?」
まだ返す気がないらしい太宰は懸賞金のことについての話にそらした
「敦君も賞金中てに参加するかい?賞金は今____七十万だ」
そう云った瞬間、敦は目をギラつかせた
金を節約しないといけないAは自分が中てたいからと敦が彼の前職を中てませんように、と祈る
勿論、表では「がんばれ〜」なんて適当な応援をしてるが
「勤め人」
「違う」
「研究職」
「違う」
「工場労働者」
「違う」
「作家」
「違う」
「役者」
「違うけど役者は照れるね」
顔を軽く赤く染め、頬に手をあてる彼からは本当に何もわからない
敦は一生懸命考えるが、何も思いつかない
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