1話 ページ3
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「おい、A!!」
「どうしました?」
とても暇な非番の日
学校にも行っていない彼女____優利井Aは本屋に行っていた
英語の単語帳を買うために
英語の検定はたくさんあるし、それで得られるものもある
就職はしているが損はない
そう思って本屋へと向かっていた
でも、欲しかったものがなかったため、仕方なく夕飯の買い出しにでも行こうかと考えていたところ、同じ会社の先輩___国木田独歩が汗を流しながら走っていたのだ
何が起こったのか…なんて、そんなものはわかりきっている
彼の同僚、太宰治だろう
太宰は同じ職場の先輩で、なぜか自'殺が大好きな…一言で表すと変人
でも、どこか怪しい雰囲気を纏っていて…よくわからない人
多分、今日も今日とて自'殺をして国木田を困らせているのだろう
「太宰を見なかったか?!」
ああ、矢張りそうか
予想が当たった、なんてことを考えていると、視界の端で猛スピードで流れていく足が見つかる
これは比喩ではなく、そのままの意味だ
川を流れていく人間の足…いや、この場合だと頭から川に突っ込んだどこぞの阿呆…と言った方が正しいだろう
それが見えてしまった
彼女はそちらを指を指していった
「今さっきそこの川を流れて行きました」
「そうか」
「私も追いかけます」
「感謝する」
走り出した国木田の後をついていく
彼女は彼の「感謝する」という言葉に口元を美しく歪めた
歪に笑うその顔を手で隠すかのように抑える
それがどんな笑顔なのか、それは誰も知ることがない
彼女自身が隠しているものだから
国木田は知らない
自分の欲のためだけに彼女が動いていることなんて
「こんな処に居ったか唐変木!」
そんな汚いことを考えていると、どうやら国木田が太宰を発見したらしい
私達はそんな彼らの処に駆け寄った
「また入水ですか?」
「いや〜、入水していた処を少年に救けられてしまってね。というわけでAちゃんもどうだい?入水!最近ちょっとずつ暑くなってきたし時期的にもいいんじゃない?」
端麗な顔から次々と吐き出されていく言葉に国木田はストレスを溜めていた
彼は苦労人である
「太宰…!!」
「おー、国木田君、ご苦労様」
ヘラっと笑った太宰にまた国木田が怒る
この二人はいつものことなので放っておく
それよりも…彼女は白髪の少年に目を向けた
とても困惑しているようだ
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