親切な後輩

第６話『あの人と君と私の気持ち』 ページ25

「今日、家に行くから」


すれ違い様、北山くんは素早く私に耳打ちした。



「え？！」



驚いて振り返ったけど、彼はすでに、他の社員と打ち合わせを始めていた。



北山くんがうちに来てくれてるのは嬉しいけど、私の家には見られてはいけないものが多すぎる。



“見られてはいけないもの“の元凶を睨み付けると、元凶のくせにのんびりアクビをしていて、それが私を更に苛立たせた。




「・・・玉森くん」



「ん？何ですか？」



「玉森くん、今日は残業の予定とかある？もしくは久しぶりに友達と飲みに行くとか」


「無いです。定時帰宅。寄り道もせず、おうちに真っ直ぐかえります」



「たまには！たまには、お友達と食事に行ってきたらどうだろう？きっとリフレッシュできるんじゃないかな」



「どうして俺の直帰を邪魔するんですか？」



「邪魔なんてしてないよ？だけど今日は友達を家に呼ぶから、少しだけ外出して欲しくて」



「え？俺がいても問題ないでしょ。一緒にケーキ食べながら韓流ドラマ見て、あーこんな恋してみたいってはしゃぎますよ？」



「・・・・じゃあいいや。私が外で食べてくる」



「冗談ですよ。今日は友達の家に泊まります。だってあの部屋は、土屋さんのものなんだから」




「あ・・・ありがとう！」




よく考えれば当然のことなのに、私の要望を玉森くんが叶えてくれたことに感動していた。




玉森、なかなかいいヤツじゃないか。



先に家で待ってると北山くんに伝えると、“一緒に帰ればいいじゃん“って不審な顔をされたけど、男物の歯ブラシは、絶対に隠さなければならない。

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