44(北山さん) ページ44
「花織、俺怒ってっからな」
「え?」
「そんなに痩せてどうすんだよ。だから肉を食えって何回も忠告しただろ」
「お肉だけ食べてもダメなのよ?みっくんは極端なんだよ」
「うるさい」
「島谷さんにも迷惑かけてるんだろうな」
「別にかけてねーよ」
諭すように俺に話しかける花織が何だか楽しそうで、そのことに切なくなってしまうのはどうしてだろう。
「言ってくれないのね」
「ん?」
「花織に長生きして欲しいって、もう言ってくれないの?」
「・・・・今だって思ってるよ。今だって願ってる。花織の健康も幸せも、あの頃と変わらず願ってる」
もう、願うことしかできないんだ。
もう、祈ることしかできないんだ。
君に幸せをあげられるのは、俺じゃないから。
「400グラム食べきってもダメ?みっくんはもう、私のもとには戻ってきてくれない?」
「食えねーだろ」
「食べるもん。みっくんが戻ってきてくれるなら私は・・・
「だから、俺のために食うなって。自分のために食え。自分のために長生きしろ」
「・・・みっく・・・みっくん・・・・やだ」
花織の嗚咽に胸が張り裂けそうになるけど、その悲しみを真正面から受け止めることしかできない。
遠い夏の日、拾ったノートに描かれていた自分の寝顔。
密かに憧れていた人が、自分を好きなのかもしれないと、身体の底から喜びが沸き上がってきたあの感覚は、今も忘れられない。
秋の終わりと冬の始まりが好きだった。
花織が楽しそうに落ち葉を鳴らす姿が、世界でいちばん幸せな光景だと本気で信じていたから。
「終わったんだよ?俺たち、3年前の春に」
柔らかな陽射しが射し込むリビングで、花織を失った。
だけど、後悔と懺悔の繰り返しの中で、ようやく見つけたんだ。
無理矢理にでも肉を食わせたくて、無理矢理にでも笑わせたくて、俺の全てをかけて、幸せにしたいと思える人を。
「・・・・島谷さんのこと、好きなんだね」
「好きだよ」
「どういうとこが好き?」
「肉を400グラム食べきれそうなとこ」
「長生きして欲しい?」
「一緒に、長く生きていきたいと思ってる」
長い睫毛を伏せて、花織は小さく笑う。
春みたいに、風に揺れる花びらみたいに。
「私はやっぱり食べきれない。みっくんにはついてけない。だから・・だから私たちは、一緒に生きてはいけないね」
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みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - 1つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした!他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます! (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです!ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです!身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています\(^^)/ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです!!!読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
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