43 2017年・3月(月城さん) ページ43
どうして結婚しないの?
籍を入れない理由はなに?
ことあるごとに、友達や家族、同僚に言われ続けてきた。
「みっくん、夕飯はどうするの?いる?いらない?」
「今日はいいや。帰り遅くなるから先に寝てて?じゃあ、行ってきます」
数年前から、同棲を始めた。
一緒に住めば、少しでも、会える時間が増えると思ったから。
この数年で、みっくんの忙しさには拍車がかかった。
早朝から深夜まで、ずっと仕事に出突っ張りだ。
私は身体が心配で、食事や睡眠に口を出してしまうことが多くなっていった。
友達と料理教室に通って、料理に関する資格もとった。
バランスを考え抜いたメニューを食卓に並べるように努力してるし、家中を隙間なく掃除して、部屋の中を毎日清潔に整えている。
だけどその全てが、みっくんには少しも届いていない。
新しく買った何種類ものスパイスが入るラックも、新調したベッドカバーにも、みっくんは少しも興味を示さない。
努力する分だけ、みっくんとの距離は広がっていく。
結婚したいとみっくんに思わせたいという打算が、私をどんどん苦しめていく。
もう、行き止まりだと思った。
どこに進めばいいのかも、わからなくなっていた。
「・・・みっくん、別れよう?」
発作的に出てしまった言葉は、私の本音ではなかったかもしれない。
「何で?」
「苦しいの。みっくんと一緒にいると、私は苦しい」
だけど、別れ以外に、この苦しさから逃れられる方法を、私は思い付くことができなかった。
「花織」
「・・・・何?」
「今まで、苦しめてごめん。俺、自分のことばっかで、仕事ばっかで、何も還してやれなかった。花織は一生懸命家事してくれて、料理もいっぱい勉強してくれたのに。だけどさ、それは花織がやりたいことなのか?俺のためにじゃなくて、花織の人生は、花織のために生きて欲しいと俺はずっと思ってた」
目を真っ赤に充血させて、言葉を震わせながら、みっくんはそう言った。
「俺も苦しかった。花織といると、すげー苦しかった」
どうしようもなく好きだった。
どうしようもなく大切だった。
だから、苦しかった。
自分を見失うほどに彼を好きになってしまったから、みっくんと離れる以外、この苦しさから逃れられないと思った。
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みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - 1つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした!他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます! (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです!ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです!身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています\(^^)/ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです!!!読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
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