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別に待っていようと思っていたわけではないけど、何となく眠れなくて、遅い時間まで見たくもないテレビを見ていた。
玄関の扉が開く音が聞こえて、私はなぜだか慌てて寝たふりをする。
「・・ただいま。A?寝てんの?」
私が寝そべっているソファーに近づいて、北山さんが私の目線まで屈んだような気配がした。
学生時代の友達と飲んでくると言っていた北山さんのスーツから、微かにタバコの匂いがする。
「電気とテレビつけっぱなしじゃん。こんなとこで寝てたら風邪引くぞ?」
何度か肩を揺すられたけど、寝たふりをしている私は、目を開くタイミングを探しあぐねていた。
「A」
お酒を飲んでいるからなのか、北山さんの声がいつもより甘ったるい。
肩に置かれていた手が、私の髪に触れた。
「一人で寂しかったか?」
そう言って北山さんが優しく私の髪を撫でる。
「・・・・北山さん?」
「起きた?」
「お帰りなさい」
「ただいま」
「北山さん、あんまり楽しくなかったの?」
「何で?楽しかったよ?」
「そう?少しだけ元気がないような気がする」
「懐かし過ぎて、感傷に浸ってたんだよ」
それ以上のことはきっと答えてくれないだろうと思って、私も何も言わなかった。
「風呂、入ってくる」
「・・・はい」
立ち上がって私に背中を向ける北山さんの腕を、思わず掴む。
「ん?どうした?」
「お風呂からあがったら、一緒に寝よう?」
「いつも寝てんじゃん」
「そうだけど・・・・」
北山さんは私の顔をじっと見つめて、それからそっと私の頬に手を当てた。
「寝ような?一緒に」
「・・・うん」
交際が突然始まった私たちの関係は、時間をかけて恋人になった人たちに比べて、何だか頼りない。
北山さんは私のことを、いったいどう思っているんだろう。
北山さん。
私は、あなたのこと、日に日に好きになっています。
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みき(プロフ) - マキさんご無沙汰してます。そして今頃すみません。全てのシーン私の抱いているみっくんでした。すごいなぁ〜。こんな素敵なお話を描けるマキさんは本当に優しい人なのだろう。私ではないけど彼女の私は沢山幸せをもらいました。さびしいです。ありがとうございました。 (2021年11月1日 15時) (レス) @page49 id: e2d6b3aa5d (このIDを非表示/違反報告)
わわか(プロフ) - 1つずつ終わっていくのがすごく寂しいです。マキさんの言葉、物語がとてもとても好きでした!他のメンバーの話も楽しみであり、終わってしまうのがさみしくもあり。最後までしっかり読ませていただきます! (2021年5月28日 17時) (レス) id: 3db566fc35 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 北山くんが主人公のお話、終わっちゃいました。私の書く北山くんが、北山くんをお好きな皆様にも温かく受け入れてもらえて嬉しかったです!ありがとうございました(*^^*) (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» 元は横尾さんがお好きだったんですね(*^^*)北山くんと横尾さんの関係性がとても好きなので、二人のお話が書けて私も楽しかったです!身長差もそうですけど、情熱と冷静みたいな対極な二人がいいなぁと思っています\(^^)/ (2021年5月23日 20時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
ちい★(プロフ) - 終わっちゃって寂しいです…。マキさんの書くお話は苦しくなったり幸せになったり…リアルで大好きです!!!読み返してきます★ (2021年5月16日 11時) (レス) id: aba16733a8 (このIDを非表示/違反報告)
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