17 (玉森くん) ページ17
一応、俺は教師で、一応、担任もしている。
家出した生徒が高確率で見つかる、商店街の隅っこにある、コンビニ前の公園。
コンビニが目の前にあるから何かと安心だし、人目にあまりつかない公園だから、身を隠すのに最適らしい。
「何してだ?お前」
ベンチに座っていたAは俺に気づいて、心底驚いたような顔をした。
「・・・玉森さん?」
「そうですよ?玉森さんです」
「・・どうして・・」
「家出したらしいな。宮田が心配してた」
「・・・・はい」
「拗ねてないで早く帰れ」
「・・帰りたくないです」
「帰れ」
「やだ」
「お前・・
「だいたい、玉森さん・・何なんですか?!」
「あ?」
「私をからかって弄んでキスさせて、付き合おうぜって言ってみたり。それなのに、こんな風に何事もなかったように出て行くなんて、玉森さんは酷いです!」
目を潤ませて、声を震わせて、必死に抗議するAの腕を掴んで、驚く彼女にキスをする。
「・・・・・どうしてこんなことするの?」
「したかったから」
「したかったら誰にでもするの?」
「しないよ?」
「・・・玉森さ・・
キスをする。
何度も、何度も。
唇をこじ開けて、俺を強引に受け入れさせる。
抱き止めたAの身体は、緊張で震えていた。
「玉森さん・・・苦しいよ」
唇を離すと、Aは浅い呼吸を何度も繰り返した。
「お前こそ何なの?」
「・・・え?」
「お前といると、俺も変になる」
悔しくて苦しい。
俺はきっと、宮田でさえも見たことのない表情で、Aのことを見つめている。
何で・・・何でこんな・・・。
「・・・・私のこと、好きなんですか?」
いくつも年下の、いつもだったら相手にもしない大学生。
普段は自信なさげにビクついているのに、こんなふうに大人びた目付きで、俺を挑発するようなことを言ってのける。
「俺のこと好きなのはお前だろ?」
目にいっぱい涙を溜めて、Aはうなずく。
「・・・玉森さんのこと、好きになっても、いいですか?」
翻弄されているのは、俺の方だ。
そんなの誰にもバレたくなくて、どうしても虚勢を張ってしまうことを許して欲しい。
「いいよ?」
緊張の糸が切れたように、その場にAがしゃがみ込む。
俺もしゃがんで、彼女の頭に手を乗せた。
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にかみつば(プロフ) - 北山くんのお話を優先して読んでたのですが、こちらも読んでみたらとても面白くてハマりました。三上先生の登場で更に面白い展開になってきて続きが楽しみです。いつも素敵なお話を作ってくださり、公開してくださりありがとうございます。 (2020年7月17日 16時) (レス) id: 74d56dba5b (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - marumarusubasubさん» marumaruさんは、もしかして横尾担様でしょうか?もしそうなら一緒です〜\(^^)/こちらが終わったら、書きかけの横尾さんのお話に取り組みたいと思ってます。いくつかお話をかかえてないと頑張れないので、未完がたくさんあるのがたまに傷な私です笑(*´-`)頑張ります★ (2019年9月16日 8時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
marumarusubasub(プロフ) - レスありがとうございます。嬉しいです。すごく読みやすく、特に横尾さんのお話大好きです。個人的に横尾さんのお話熱望ですm(_ _)mこれからも楽しみにしています! (2019年9月14日 20時) (レス) id: 7cd9d44213 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちい★さん» 本当に( ;∀;)やっとだったのに。設定的に30年近くかけて、初めて人を好きになったのに。。という、やりきれない気持ちになりました(自分で書いておきながら笑)。皆さんが願ってくださるラストになればいいなと思いながら(私も先は知らないのです)更新がんばります★ (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - わわかさん» わわわわ(*´-`)私の書いたお話にかわいさを感じてくださってるなんて〜(*^-^*)嬉しいな♪ちょっと今の展開は穏やかではありませんが、ほんわかじんわりなお話に戻れるように苦しい場面を乗り越えたいと思いますp(^^)q (2019年9月14日 15時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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