全10話で完結する恋愛ドラマみたいな

第一話『18歳・夏』 ページ3

「玉森くん、明日は体育出た方がいいよ？実技の成績に入るから」




「体育〜？あんま好きじゃないなぁ」




「好きとか嫌いの問題じゃないよね？就職するにしても進学するにしても成績は重要だよ！」




「委員長は？進学するの？」




「うん」




「じゃあ俺も同じとこに行こっかなぁ」




「無理だよ。玉森くんの成績じゃ入れない」




「ふ〜ん、じゃあいいや」




最初からそんなこと思っていないくせに、玉森くんはテキトーにそんなことを言う。




「委員長」




「ん？」
　



「毎日暑いねぇ」




「夏だからね」




「ふ〜ん」





一学期は、もうすぐ終わる。





玉森くんは、授業中、あんまり寝なくなったけど、たまに遅刻はする。




「進学するなら、夏期講習来た方がいいよ？」




「うん」




教室の冷房は、いつだって高めの温度で設置されていて、夏の陽射しに全然勝てていない。




今日は、雲ひとつない快晴で、空はどこまでも青く青く続いている。




「委員長見て！」




「え？」




「飛行機雲！」






青い空に突如現れた飛行機雲。





教室の中で、窓の外を見ているのは私と玉森くんだけだった。






「いつか、思い出すかな」




「え？」




「例えば10年後とかに。委員長と二人で、教室から飛行機雲見たなぁとか」




「・・・・・私は、玉森くんが授業中寝てばっかりだったことしか思い出さないと思う」




「あはは。そだね。そっちの方が印象強いかぁ」






言いながら、なんだか泣きそうになっていた。





だって・・・10年後、私が思い出すのは確実に、玉森くんと教室から見た飛行機雲に決まっているから。





柔らかそうな髪にも、透き通るような肌にも、綺麗な顔立ちにも、確かに惹かれる。





だけど、笑う時、垂れてしまう目尻とか、ゆっくり上がる口角、それから、玉森くんを包み込む、果てしなく穏やかな雰囲気に、私はいつの間にか魅了されていた。





「飛行機雲、なかなか消えないねぇ。てことは明日は雨だよ。飛行機雲で明日の天気がわかんだよ」





「知ってる」




「なぁんだ。つまんないなぁ。委員長は、何でも知ってますねぇ」






知らないことは、たくさんある。



知りたいことも、たくさん。






玉森くんは、いったい、どんな人なんだろう。





背中ばかり見ている私には、全然わからない。

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