透き通る

23 (横尾くん) ページ23

図書館を出ると、ちらほらと浴衣を来た子どもたちが商店街に向かって歩いていく。



高校生が行くような催し物ではないから、制服姿の俺たちは、結構目立っていた。




「お祭りのにおいがする！」




はしゃいだ声で、澤木はそう言った。




本当にこの夏は、勉強一色の夏だったらしい。




かき氷が売ってある出店には、子どもがたくさん並んでいる。




シロップの種類は5種類。




「お前、何にする？」




「全部がけにする」




「は？」




「全部がけしてくれるんだよ！味は混ざっちゃうけど」




「気持ちわりー」





顔をしかめている俺の隣で、澤木は全部がけとやらを頼みやがった。




俺は普通にブルーハワイ。





やっぱり澤木のことは、あんまりよくわからない。





「みっくん！」





山盛りのかき氷を溢さないように歩いていると、澤木が突然そう叫んだ。





目の前には、ジャージ姿の北山がいて、俺たちを見て、驚いたように目を見開いている。





「・・横尾くん、みっくんと私が幼なじみだって知ってるから、もう隠さないね？」




澤木が俺にそう言って、穏やかに笑った。






「こらー。買い食いかぁ？」




北山が俺たちとかき氷を見比べながら近づいてくる。




「横尾は、ブルーハワイか。フツーだな」





「ほっといて下さい」





「Aは全部がけね」





「うん」





北山は、この奇妙なかき氷を知っているみたいで、俺はそのことが少しだけ悔しかった。





「味見してやるよ」




突然そう言って、澤木のかき氷にかじりついた北山は、かき氷の山の部分を一口で崩してしまう。




「変な味」




そう言い残して、北山は俺たちの間をわざわざ通って帰っていく。




二人きりでいたことには、何も触れずに。





「変な味ってひどいな」





「え？」




「だって、みっくんが全部がけにしろって言ったんだよ？私がいつも迷うから、いっそのこと全部かけちまえって」





「去年まで、北山と来てたの？」





「うん。高校も違ったし、かき氷だけ買いに」





北山が半分奪ったかき氷を、澤木は寂しそうに見つめる。




「交換」




「え？」




まだ手をつけていないブルーハワイと、澤木の奇妙な全部がけを無理やり交換した。





「ほんと、変な味」





不味くも旨くもない、変な味のかき氷。




澤木と北山の想い出に、無理やり入り込んだような気がした。

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