43 (横尾くん) ページ43
「ねぇ、横尾くん」
「ん?」
「これ、合ってるかな?」
「合ってる」
「やった!」
図書館での勉強は、いつの間にか再開していた。
塾のない日は、ちゃんと図書館に現れる澤木。
その生真面目さは、少し痛々しいくらいで、澤木の成績が上がれば上がるほど、俺は何だか悲しくなった。
「澤木」
「何?」
「お前、ちゃんと寝てる?」
「・・寝てるよ?」
「目、充血してる」
「そうかな?」
「メシも、ちゃんと食ってんのか?」
「食べてる。横尾くん、どうしたの?お母さんみたいなことばっか言って」
"心配なんだ"とは、言わない。
「別に」
北山への想いが、澤木の中でどんなふうに整理されたのかはわからない。
だけど、受験に向けられたこのひたむきさは、そのまま、澤木の北山への想いの強さなんじゃないかって、そう思う。
「受験に逃げるヤツも珍しいしよな」
「え?」
「北山への気持ちから逃げてんだろ」
澤木は顔を上げて、それから抗議するような視線を向けた。
「・・・横尾くんが待てって言ったんでしょ?だから、決めたの。みっくんのこと、ちゃんと待つって」
「そんな当て付けみたいな待ち方するな。ちゃんと寝て、ちゃんと食え!痩せこけて、そんなふうに目を充血させたお前見ても、北山は辛いだけだろ」
「・・当て付けなんて、そんなこと思ってない」
心配してるのは・・俺で、憔悴してる澤木を見るのが辛いのも俺なんだ。
だけど、そんなことは言いたくなくて、この気持ちを知って欲しいなんて、少しも思わない。
「試験本番に体調崩したら、意味ないからな」
「・・・はい」
シュンとする澤木を、思いっきり抱きしめて、「大丈夫だよ」って、「俺がいるから」って、そんなふうに励ましたい。
だけど、やっぱりできなくて・・・
俺は、澤木の好きな人じゃなくて・・・
「もっとしっかりしなきゃ・・」
気合いを入れ直すみたいに、澤木が自分の頬をペチペチと叩く。
やっぱり俺は、北山のかわりにはなれないんだ。
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マキ(プロフ) - 青黄赤緑紫LOVEさん» 大切な想い出を共有させていたただき、ありがとうございます。かき氷のシロップの全部がけ、北山くんと横尾くんの対比を明確にしたくて描いたシーンでした。私の思いついたシーンが誰かの想い出をくすぐることがあるなんて、なんだかジーンとしてしまいました(;-;) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - ちはるさん» お返事が随分遅くなってしまいさました。すみません!横尾担からの北山担のちはるさんの為に作ったようなお話ですね笑!私も二人とも大好きです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかみつばさん» コメントに気づかず、長い時間が経ってしまっていました。すみません!『透き通る』という題名なので、登場人物たちの気持ちをキレイだと言っていただけて嬉しかったです(*^^*) (2021年12月19日 17時) (レス) id: 50fef8eb31 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 氷・レモン・氷、メロン・氷・ブルーハワイ、氷・最後にイチゴ・練乳でした。 最初はイチゴ練乳だから美味しかったのを覚えています。ブルーハワイの途中から味が混ざり独特な味がし、二人して吹き出した事を懐かしく思います。思い出させてくれて有難う御座います。 (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
青黄赤緑紫LOVE(プロフ) - 先日は、パスワード有難う御座います。 家事の合間に拝読させていただきました。かき氷のシロップ全部かけ…故主人と最期の夏祭りのかき氷、シロップ全部かけした事を思い出しました。私が買ったかき氷屋さんのは、氷とシロップを重ねて層にするもので下から (2021年12月18日 21時) (レス) id: 3c812bd8e4 (このIDを非表示/違反報告)
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