10 (北山くん) ページ10
思い付く限りのところに連絡をして、思い付く限りの場所に出向いた。
Aの痕跡はどこにもなくて、嫌な予感ばかりが胸に広がる。
「・・どこに行ったんだよ」
すぐに見つけ出せると思っていたのに、何の手がかりもないまま、Aがいなくなって1週間が過ぎていた。
何も持たずに、人はどこまで行けるんだろう。
お願いだから、生きていてくれ。
コンコン。
「はい」
「副社長、興信所の方がいらっしゃってます」
「通して」
ドアが開いて、いくつも依頼した興信所の中の一人が、資料を抱えて入ってくる。
「Aは、見つかりましたか?」
「はい。うちの社員が、望月Aさんと見られる女性を都内で発見しました」
「・・・・はぁ・・よかった」
ソファに崩れ落ちる俺に、興信所の男性は同情的な視線を投げかけた。
「これが、報告書です」
差し出された報告書を広げると、そこには、隠し撮りされたAが写っていた。
「望月Aさんに、間違いありませんか?」
「はい!Aです!間違いありません」
「そうですか。・・・・あの、大変申し上げにくいのですが・・・
「何ですか?!はっきり言ってください」
「Aさんは、以前の記憶を無くされているようです」
「え?」
「次のページを捲ってください」
男性に言われるまま、ページを捲る。
"二階堂こども医院"と書かれた小さな病院と、白衣姿の、やっぱり隠し撮りされた若い男の写真。
「この男性が、どうやらAさんを保護しているみたいです。Aではなく、"桃"と呼ばれていたそうです」
「・・・桃?」
「最後に、今、Aさんは、精神科に通院しています。そこに写っている男性・・二階堂さんとおっしゃるみたいですが、彼が、献身的に面倒を見てくれているようです」
何が起こってる?
あまりのことに、全然頭が追い付かない。
「あの、この小児病院の近くに、小さな公園があります。Aさんは午後になると、必ずここに散歩にくるみたいです」
それから先のことは、あまり覚えていない。
とにかくAに会いたいと、そればかりを考えていた。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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