45 ページ45
病院のベッドの上で目を覚ますと、みっくんが私の手を握って微笑んでいた。
すごく、優しい顔。
一気に、安堵感に包まれる。
「おはよ、A」
「・・・おはよ」
みっくんが私の髪を、愛おしそうに撫でる。
「・・・ごめんな?」
「・・え?」
「本当に・・・ごめん」
「みっくん?私こそごめんなさい。今までみっくんのこと忘れてたなんて・・・
「ずっと、忘れてた方がよかったよな?あんな辛いこと・・・」
「違う!私が弱いから!あれくらいのことで私が記憶をなくしたりするから、みんなを心配させて・・・」
あの日、どうやって家に帰りついたのかは覚えていない。
ただ、消えなくちゃいけないと思った。
あんなにみっくんのお父さんを怒らせて、みっくんの将来を邪魔する私は、消えなくちゃいけないと思ったの。
「A」
みっくんが両手で私の頬を包み込む。
まるで、私がみっくんの宝物にでもなったみたいに。
「別れよう?」
「・・・・みっくん?」
「俺は、Aを傷つけた人の息子だから。Aはこの先、俺を見るたびに思い出しちゃうだろ?人生で一番辛かった記憶を、俺を見るたび思い出す」
「・・・そんなことない。みっくんに傷つけられたわけじゃないのに!」
「同じだよ?俺はあの人の家族だから。俺がAを傷つけたのと同じことなんだ」
「・・・そんなの、おかしいよ・・」
「俺は、親父の側を離れないことに決めたんだ。間違ってる人には、間違ってるって言い続けてあげなきゃいけないから。Aにしたことも、いつか必ず悪かったって思わせる・・・どんなにあがいても、あの人は俺の父親だから。・・・だから、ちゃんと好きになりたいんだ」
みっくんの顔は穏やかだった。
お父さんへの怒りは、お父さんへの祈りに変わっていて、みっくんの切ないほどの愛情に、私は涙が止まらなかった。
「A・・好きだよ。好きで、好きで、好きなんだ。だから・・・・別れてくれ」
矛盾だらけの言葉を、何度も何度も噛み砕いて、みっくんの本心を知ろうとする。
だけどやっぱりみっくんは別れたいと思っている。
別れたくないと思う気持ちと同じくらい強く、私と、別れたいと思っている。
786人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ