44 (北山くん) ページ44
病院から、そのまま実家に向かった。
車をどんな風に運転してきたのかさえわからないほど、頭の中は怒りに満ちていた。
乱暴に玄関を開ける。リビングのドアも。
「川田さん」
川田さんは俺を出迎えることもなく、キッチンの隅でうつ向いていた。
「川田さん!知ってることあるんでしょ?Aを見た時の川田さんの顔、普通じゃなかった」
「・・・私は・・・
「A、この家に来たことがあんだろ?!」
「・・・・はい」
俺のあまりの剣幕に、川田さんは頷く。
「・・・・Aに、何があったの?」
川田さんは目にうっすら涙をためて、少しずつ真相を話し始めた。
「Aさんがここにいらっしゃったのは、3月2日のお昼頃だったと思います。リビングで旦那様と秘書の檜山さんと、3人でお話になっていました」
「話?何の?」
「・・・・それは・・・
「言って!」
「・・・・宏光さんと別れて欲しいという内容だったと思います」
何もかも想像通りすぎて、怒りを通り越して笑えてきた。
俺の恋人さえも支配しようとする父親に、哀れみさえ覚える。
「・・・Aは?何て言ってた?」
「Aさんは、宏光さんと話させて欲しいと言っていました。二人で決めたいと。時間をくださいってお願いしてました。・・・だけど・・
「何?」
「旦那様はそれを許そうとなさらなくて、身分違いなことを執拗に責めていました。ご両親のことまで持ち出して・・聞いてる私も耳を塞ぎたくなるようなことをおっしゃって。Aさんは、泣いていたと思います」
どうしてなんだろう。
俺がいちばん泣かしたくない人を、どうして俺の父親が泣かすんだろう。
俺がいちばん傷つけたくない人を、どうして俺の父親が傷つけるんだろう。
「・・・・最後に、旦那様は手切れ金を渡そうとされたんですけど、Aさんはそれを受け取ろうとなさらなくて・・・・・」
そこまで話した川田さんは、その時のことを思い出したくないようにぎゅっと目を閉じる。
「・・・投げたんです。旦那様は、Aさんの顔にめがけて、お金を投げつけたんです。その時、Aさんの中の何かが、折れてしまったような気がします」
「うわぁぁぁぁーー!!!!」
怒りが、行き場を失って叫びに変わる。
もう二度と、あの日の二人には還れない。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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