4 (二階堂くん) ページ4
ご飯とインスタントみそ汁、それから俺の作ったぐちゃぐちゃの卵焼き。
それが、今日の朝食。
「老い先短いのに、今日もこんな酷い飯を食わなきゃいかんのか」
じいちゃんがため息をつきながら椅子に腰掛ける。
「いいかげん慣れろ」
お茶をつぎながら怒鳴る俺とじいちゃんのやり取りを、彼女はビクビクしながら聞いている。
「あ!名前!名前がいるよな。あんたとかお嬢ちゃんとかばっかじゃ可哀想だもん」
急に思い付いて大声を出す俺に、彼女は更にびくついた。
「節子はどうだ」
「節子って・・・それ、死んだばあちゃんの名前だろ」
「ダメか」
「ダメだろ」
俺は彼女の正面に立って、彼女の名前を考える。
人の名付けをするのは初めてだ。
「・・・あ!!いいこと思い付いた。君が現れた昨日って、3月3日だったよね?日付にちなんで、"桃"は?桃の節句の"桃"」
"桃?"
「そう、桃。・・・・どうかな?」
気に入ってくれるかどうか心配している俺に、彼女は初めて微笑んでくれた。
"かわいい"
口の動きは確かにそう言っていて、俺はたちまち嬉しくなる。
「じゃあ、今日休診日だから、メシ食ったら買い物に行こう。俺もついていくから」
"はい"
「いいなぁ、女の子は。いるだけで華やかになる」
じいちゃんが目を細めて、感慨深げに呟いた。
「俺の立場!」
「本当にお前は、座ってるだけで騒々しい」
苦虫を噛み潰したような顔で、俺を威嚇するくそじじい。
「俺も可愛い孫だろうが!」
「可愛くない」
「可愛い!」
「可愛くない」
「可愛い」と「可愛くない」を言い合い続ける俺たちを、桃はずっと、楽しそうに見つめていた。
786人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ