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あれから北山さんとは、頻繁に会うようになった。
北山さんがお休みの日は、一日かけてデートしたし、お休みじゃない日も、『顔を見に来た』って少しでも時間があれば会いに来てくれた。
記憶を失う前も、私はきっと、北山さんに大切にしてもらっていたんだろうってそう思う。
「今日、北山さんと会う日?」
朝食を食べながら、二階堂さんが私にたずねる。
"はい"
「いらないからね?昼ごはん。夜も!」
"・・・はい"
二階堂さんは、北山さんと会う日、私が食事の準備をしていくことを嫌がる。
ご飯作ってる暇があるなら、化粧に時間かけろとか、洋服を選ぶ時間に当てろとか、よくわからないことばかり言う。
正直、私はご飯を作らせて欲しい。
二階堂さんが、ろくなものを食べてないんじゃないかって、すごく気になるから。
.
「あはははは!」
私の話を聞いたおじいちゃんは豪快に笑った。
"何で笑うの?"
「いや、幼稚なやつだなぁと思ってさ。いつもは食べるんだろ?Aちゃんのご飯」
"うん"
「Aちゃんがいないのに、Aちゃんのご飯を食べるのが嫌なんだろう」
"?"
「わからないかい?」
"わかんない"
「・・ずっと、わからないままでいてやってくれよ」
"え?"
「世の中の全部を知らなくてもいいってこと。知られたくないことも、知りたくないことも、誰にでもあるんだから」
おじいちゃんは、とても優しい眼差しで私を見つめる。
「生きるってことは、偶然と奇跡の連続だな。Aちゃんは、どうして高嗣のところにやってきたんだろうねぇ」
偶然と奇跡を何度も繰り返しながら、私が二階堂さんのもとに辿り着いたのだとしたら・・
それは・・・
それは・・・
「Aちゃん」
"ん?"
「時間!北山さんを待たせちゃダメだよ」
"あ!"
約束の時間まで、あと30分。
"またくるね"
おじいちゃんに手を振って、病室を出た。
二階堂さんは、お昼に何を食べるんだろう。
夕食の買い出しには行くのかな。
『余計なお世話だ』って、二階堂さんの声が聞こえた気がした。
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れいな - 初めましてこんにちは。このお話が大好きで何度か読ませていただいております。そのたびに大号泣しています。こんな素敵な作品に出会わせてくださってありがとうございます。 (2020年7月4日 4時) (レス) id: ac9fdaad24 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - naoさん» はじめまして。コメントの通知が来ておらず、お返事が遅くなってすみません(>_<)naoさんは二階堂くんがお好きなんですね!私の書いたもので、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいです(*^-^*)書いててよかったです。コメント、ありがとうございます(^-^) (2019年8月26日 13時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
nao(プロフ) - 初めまして。二階堂高嗣で検索して、このス素敵な物語に出会いました。もう最初から最後まで、胸がギューっとなりながら一気に読み終えました。今まで読んだ作品の中で、1番好きです。本当に感動しました!大好きな二階堂くんがしあわせになってくれて嬉しいです! (2019年8月7日 3時) (レス) id: 98957e13af (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - くまのこさん» 意味がわからないくらい...なんて、そんなに泣いてくださって感激です(;∀;)お気に入り作者に登録していただいて、重ね重ねありがとうございます★ (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
マキ(プロフ) - にかあゆさん» 泣いてくださったんですね!うわぁぁ、ありがとうございます(;∀;)そして、全作品読んでくださったなんて嬉しいです! (2018年8月8日 19時) (レス) id: a3dcba5f46 (このIDを非表示/違反報告)
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